エソラゴト

ビール・ストリートの恋人たちのエソラゴトのレビュー・感想・評価

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バリー・ジェンキンス監督の前作『ムーンライト』とは時代・舞台設定は違えど、共通点として一人の人間としての成長譚・貫き通す純愛・頼れる守護者の存在が描かれており、今作ではある一人の女性の視点でストーリーが静かに穏やかに進んでいきます。

永遠の愛を誓った若き2人の目の前には時代背景による理不尽と困難が横たわっています。身重な少女1人ではとても太刀打ち出来ないそんな過酷な現状も周りの大人達の大いなる愛の力によって守られる事で少女も一人の大人へと変わっていきます。

原題通り"もしビール・ストリートが語っていればー"、この若い2人の未来はまた違ったものになっていたでしょう。しかしその試練を乗り越える事でまた愛の絆が強固なものになったのも事実。テーブルを囲んだ3人の姿には前途多難ではあるけれど明るい道筋が見て取れました。

…と何だか書いているこちらがこそばゆくなるくらいの真っさらで清々しい"愛"についての物語でした。


追記:今作は美しい映像表現や洗練された音楽だけでなく音響効果も素晴らしく感じました。劇中のティッシュの語りがやけにクリアにしかも劇場全体から聞こえるなぁと思っていましたが、パンフの解説によると観客を包み込むまるで"神の声"に聞こえるように音響設計を施しているとの事。映像だけでなく音響も重要視しているというジェンキンス監督の拘りを感じました。



余談:自分にも一つ年下の5歳からの幼馴染がいましたが、恋愛関係には発展しませんでした。やはりどうしてもそれだけ長い付き合いだと身内感覚がありそのような感情は全くもって生まれませんでした。なのでその点だけは個人的に違和感を感じてしまいました。