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スリー・ビルボードのwoosのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.5
ユナイテッドシネマとしまえんにて字幕版を鑑賞。
2018年鑑賞10作目。
観客は5割くらい。
テーマ「終わらせられない痛み」

[全体として]
いやースゲーものみた。
あまり情報を入れずに観たのだが、実話ベースの話だと思い込んでいて、完全にフィクションだったという事をプログラムを読んで知って驚いた。だってアメリカなら如何にもありそうな物語だったから。
アメリカ中西部のヤバい白人たちが主な登場人物なので、プログラムでの演者さん達のインタビューでも度々言及されているが、コーエン兄弟とか、イーストウッドの作品にルックが似ている。それってつまり面白い映画だって事ですよ!

[良かったところ]
雰囲気はユーモア(かなりブラックな)もあって多少弛緩した雰囲気もあるが、アメリカのほとんど白人しか住んでいない田舎の閉塞感がすごく表現されていて、音楽もそれにマッチしていて「何となく嫌」という雰囲気が凄く良かった。
何と言っても演じる役者たちの「手練れ振り」といったらちょっとなかなか無いくらい脇役も含めて全て生きたキャラクターだった。
主人公のやり場のない怒りが、全方位に向けて炸裂するのだが、犯人が見つからない為、一番の矛先を向けてしまう署長もまた痛みを抱えているのを知りつつも、やはりなにかアクションを起こさないと変わらない現状を、強い信念でどんどん自ら変えていくことで、何とかこの世に自分を繋ぎ止めているという複雑な役を見事に表現している。きっと何日も眠れない夜を越えて、考えて行動を起こしたんだろうと想像することは難くない。
そして、署長役のウディ・ハレルソンもだんだんそれを間接的に応援するようになる。
ただ、そのような機微を持ち合わせてないサム・ロックウェルが演じる部下の警官ディクソン。彼は署長を父親の様に尊敬しているのだが、スゲーバカで差別主義者(まあバカだから差別するんだろうけど)だから、どう動いて良いのか分からないので、誰彼構わず攻撃してしまう。(彼の怒りの理由はそれ以外にもあって、それはプログラムの町山さんの解説を読むといいだろう)このバカにも結局はスゲー泣かされた。クズが最後に残った何かを振り絞って行動するっていうのは何時も泣かされる。

あと、看板が3枚あるのはこの3人に焦点を当てた映画であると言う町山さんの解説は素晴らしい。
語彙力が無いので上手く表現出来ないが、一言で言うと「脚本と演出が超イイ」

[気になったところ]
多分この裏で傷付いた人やサイドストーリーも沢山作れそうなので、ファーゴみたいにドラマシリーズにしても良さそうだなぁ。

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この監督の映画初めて観たけど、他の作品も観てみたい。
超オススメです。
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