あーや

花筐/HANAGATAMIのあーやのネタバレレビュー・内容・結末

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

誇り高き永遠のアマチュア作家であり、映像の魔術師、大林宣彦監督。彼の最新作「花筐」を観ました。原作は読んだことがないのですが、11月に書かれた大林さんのショートエッセイ付きで光文社から出版された一冊がAmazonで届きました。これから読み始めます。
まだ小説を読んでいないので正直全く原作のストーリーはわかりません。しかしこの映画に限っては物語なんてどうでもいい。瞬きするのも惜しいくらい迫力ある映像が色彩豊かに猛威を振るい、バッハのプレリュードを柱に様々な音楽や音響が重なってゆく繊細さに心酔する。そう、2時間40分強の間流れ続ける音楽が映像から得る興奮を更に掻き立てるのですね。私たちはこのふたつの衝動に全身の感覚を任せているだけで良いのです。なんの思考も必要ない。観ながら物語の進んでゆく展開を予想するのもアホらしくなるほど、目の前で広がる映像と鼓膜に響く音楽の威力が強すぎるのです。ステージ4の肺がんで余命3ヶ月と宣告された齢80歳の創った映像だなんて到底信じられない..。そんな力強さに満ちているのです。オープニングから痺れてエンディングまで痺れっぱなしですよ。とんでもないことです。
俳優に関してやと先ず主演の矢作穂香ちゃんの顔が良いですね。「House」の池上季実子や「さみしんぼう」の富田靖子と同じ系統の黒髪ロングが似合う美しさと愛らしさを兼ね揃えた美少女。貴方は美那ちゃんを演じるために最近生まれてきたのですね!と確信するほど大林さんの映画にピッタリのお顔なのです。そんなthe 大林映画'sヒロイン顔の彼女がスクリーンの中に存在しているのですから、もう、、、ねぇ。そのなんとも言えない可憐さ、麗しさに魅了されっぱなしです 。美那ちゃんの血を吸い続けてきた常盤貴子の妖艶さは終始ただ漏れしっぱなしだし、山崎紘菜の健康的な可愛さと門脇麦のツンとした愛らしさは両極端でこの2人が祭囃子の中でキスした時には思わずひゃっほう♪だし、窪塚俊介くんは何か企んでいそうな笑顔が何とも不気味で長塚圭史と満島真之介はこれまた両極端にどちらもただただ濃い。うーん。彼らの濃密な演技に満たされた映像は何度も反芻できるのですが、やはり物語はほとんど覚えていないな。それだけ画が美しくて刺激的だったのですが、 特に圧巻だったのはは満島真之介くんと窪塚俊介が夜の浜辺で裸の乗馬をしていたシーンですね。満島くん「脱げよ。馬も裸なんだから僕らも裸だ」窪塚くん「そうだね♪」私「そうなの?!?!?!?!??」····そうだったみたいです。二人とも私の前で気持ちよく脱いでくれました。そして裸の男二人が裸馬にのって腰に手を回してパッカラパッカラ...おおおお、これはすごいぞ!なんて画だ!!!顔色の悪い長塚さんも遠くから望遠鏡で見ていましたね。そりゃあ見るよね!すごい画だものね!!!私、死ぬまでこの映画を思い出す度にこのシーンを何よりまず一番に思い出すでしょう。しかしもう充分お判りでしょうが、すごい画はこのシーンに限ったことではない。ラスト直前の怒涛のシーンなんてもう、、、画も音も勢いがすごすぎて波どころか竜巻に飲まれてしまったのかと錯覚するほどのパワーが渦巻いているのです。あれは一体なんだったのだろう。言葉では表現出来ないけれど、映像というよりは目の前で繰り広げられる体感型アトラクションのような興奮です。気を失ってしまいそうなね。気を失ってていても仕方が無いと思います。3Dを持ってしても新作映画であんな経験はなかなかできない。(もちろん本作は2Dです。3Dで観たらショックで死人が出ると思います)いやー、素晴らしかった。物語やセリフや役者が云々というような作品ではなく、感覚でひたすら興奮し続ける2時間半。しかし長尺による退屈さなど全く無く、寧ろ怒涛の映像はエンディングにかけてさらに濃度が増して最後は実に静かに終わる。
そして鑑賞後。いつも通りすんごい作品を見たあとの震えが止まないまま始まった大林さんのトークショー。花筐についてやご自身の癌について話されるのかと思ったら、フレッド・アステアのお話をされていました。そこから徐々に花筐の話に向かうのかなと思いきや、大林さんが映画を撮り始めた頃のお話が続く。30分しかないトークショーの内22分間は癌や花筐のお話はちっともされなかった。なんて愛らしいのでしょう。「最近は毎日がん細胞と話しています。可愛いやつなんですね。がん細胞よ、お前はお前の栄養となるものをしっかり食べる。私の血や肉を食べている。ただな、おまえが宿子ならワガママを言わずに宿主である私に敬意を払え。お前がワガママをし続けると共倒れするぞ。一緒に長生きしようじゃないか。そんなことを話していたら、私自身も地球にとってはがん細胞なのではないかとはっと気付いたのです。地球を滅ぼそうとしているのは私たち人間。がんと話しながらひとつまた学びました。少しは我慢して生きていこう。がんになる前よりまた少し賢くなりました。表現者というのは目の前のことを得点法に考えます。少しでも賢くなろうとする力が働くのです。そして私が今生きているのはこの映画に宿った力が生命力を持ったからなのです。」
ね。日本を代表する私たちの巨匠ったら本当にチャーミングでかっこいいですよね。あと30年は生きるとの事なので、あと10本は新作を観れますね♪次の作品がもう楽しみです。
あーや

あーや