砂場

花筐/HANAGATAMIの砂場のレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
4.1
ずっと見逃していてようやくコロナ状況の中で見ることができた。そうなるとどうしても感染症の描写が目に飛び込んでくる。多くの戦争では疫病による死亡が戦死者を上回るようであり、戦争と疫病は切り離せない。
この「花筐」では結核がかなり重要なモチーフで、文学史の中でこの結核は正岡子規や中原中也など文学者の死のイメージに重ね合わされてきた。史実かどうか知らないけど沖田総司も結核で血を吐くイメージが流通している。痩躯で咳き込み、白い着物に鮮血というのは文学的に”絵”になるのだろうがなんとなく紋切り型だなあと考える。
この「花筐」でもその紋切り型からは逃れられているわけではないのだが、大林宣彦全開の色彩やカット、情報の過剰さ故に単に文学的に絵になる病というイメージを突き抜けている。

大林宣彦の描く日本は、どこか無国籍の極彩色の国。絵画で言うとマニエリスムのようなカラフルさ誇張や歪みがあり日本でないどっかの日本のよう。
ドローカルの話だが、近所に中級ユーラシア料理の日の丸軒という風変わりな店があった。昭和初期の日本歌謡が店内にかかり日本なのかアジアなのかごちゃ混ぜの耽美的なインテリア、多国籍の料理(結構うまい)はどこでもない日本だった。

多くの若者たちが死んだ、戦争は嫌だし疫病も嫌だ。大林宣彦のそのメッセージは骨太であると同時に日本でないどっかの日本風であり強烈な印象を残す
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