鋼鉄隊長

バッド・ジーニアス 危険な天才たちの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

4.0
シネ・リーブル梅田にて鑑賞。

【あらすじ】
天才少女リンは、奨学生として進学校に転入。補習常連組のグレースと知り合う。ある試験中、リンはグレースのカンニングを手助けしたことをきっかけにビジネスを思いつくが…。

 受験はよく「戦争」に例えられるが、それに従えばカンニングは「魚雷」だ。優秀な成績を修める戦艦たちと並び戦うには「月月火水木金金」の猛勉強よりも、当たれば一撃轟沈の魚雷に頼りたくなるものだ。この作品は、そんな魚雷に翻弄された天才少女リンの学園戦記であった。
 カンニングにも色々手段がある。カンペ、覗き見、電子メール。その中でタイのおバカ生徒たちは、なんと学年主席のリンに頼り切る暴挙に出た。カンペくらい自分で用意してはどうかと叱ってやりたくなる。しかもリンの手助けの仕方はどれも危なっかしい。解答が書かれた消しゴムをわざわざ靴に隠して渡したり…。悪事に慣れない真面目ちゃんのやり方は、見ていてヒヤヒヤする。期末試験では打電(正確には指の動き)で答えを教えた。机を打ち付ける右手の動きにトンツー音が重なる。これは海軍兵学校で行われていたと噂の「モールス符号方式」!! すごい!本当に出来るんだ。賢い人のカンニングはいちいち気取ってるなぁ。
 それにしても、アホ生徒たちは何をやっとるか!カンニングをするなとは言わない(いや、言うべきか)。優等生におんぶにだっこなのが許せん。唯一自力でやったのは期末試験での覗き見だけ。しかしこれが酷い。1m以上離れた隣の席を身を乗り出して見るなんてなってない。せめて見るなら斜め前の席。体は動かさず首だけを使え! 補習で貰った問題がそのまま出題されても全く解けないくせに、魚雷の手入れまで怠るとは情けない。
 しかし、慢心しきった与太郎たちは気付いていなかった。不正を丸投げすることは、魚雷を奪われたも同義。撃たれてしまえば一巻の終わりだ。そこが物語をぐっと面白くする。同じアホに奪われるならいざ知らず、相手は魚雷を持てない戦艦である。見つかるギリギリの不正行為を繰り返し、朱に染まったが故に告発も出来ない。負け戦とわかった上で如何にして一矢報いるか。ここまで神経を擦切らせて観た映画は珍しい。手に汗握る最高の戦争映画であった。
鋼鉄隊長

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