シズヲ

点のシズヲのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.6
田舎町の理容師と学生時代の元恋人のささやかな再会、十数年越しの遣り取りを経て得られる小さな“解放”。そんなこんなで再び短編映画を視聴。山田孝之は演技も存在感も抜群で引き込まれるし、中村ゆりの可愛らしいけど何処か窶れてる雰囲気も好き。物語はほぼ理髪店のみで完結してて、再会した二人のぎこちない会話劇に終始している。この掛け合いの何とも言えぬ空気感(それを踏まえた会話のテンポ)が印象的で、互いに妙な気まずさを感じながらも手探りでコミュニケーションを進めていくさまが実に生々しくて好き。多くを語らずに仕草や表情で訴えかけようとする奥ゆかしさも良い。

元恋人の秘密はかなり直接的に描かれるけど、理髪師も同じように苦い秘密を抱えていることが伺える。電話の着信を無視する下りや子供向けの玩具が放置されてる様子が描写され、「結婚して子供もいる」と言及されながらも家族については一切触れられない。二人は互いに表には出さずとも、葛藤や苦悩の中で日常を過ごしている。だけど十数年ぶりの再会を経て何気ない会話を続けていくうちに、気がつけば少しだけ肩の荷が下りていくんだよな。他者との縁や交流によって、人はやり直すための手がかりを掴むのだなあ。最終的な着地点も含めてミニマムに纏まっているものの、胸のつかえが取れた二人のおかげで確かな清々しさがある。あとyonigeによる主題歌、本編から一気にテンション変わるので爽快だけどそれはそうと驚く。

それはそうと中村ゆりの映し方、やけにフェチのようなものが滲み出てる気がするんだよな。うなじのクローズアップや産毛を剃るシチュエーションの見せ方、足下へと向けられたカメラワークなど、要所要所で彼女の色気を切り取っている感がある。不倫という背徳性も尚更そのへんを際立たせてるので、良くも悪くもちょっと『言の葉の庭』的なやらしさはある。
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