tetsu

かえりみちのtetsuのレビュー・感想・評価

かえりみち(2017年製作の映画)
4.2
ムーラボで監督を知り、twitterから限定公開をしていたので、気になって鑑賞。

震災で自宅からの避難を余儀なくされ、新たな住居での生活を始めた大浦家。
あれから数年、全てが変わってしまったある家族の記録。

監督のムーラボ作品『afterimage』を観たときから、本作が、どうしても気になっていたので、この機会に観ることが出来て良かった。

本作の後日談となる『afterimage』では、「大浦家が住んでいた住居のその後」が描かれていたものの、その意味合いは本作を観て、初めて理解できるようにも感じた。

生まれ育ってきた大切なわが家で残された過去の記録と、現在の厳しい状況。
親密さを感じる家族の会話によって、重たさはかなり軽減してうつしだされていたけれど、2つの映像が交錯していく様には、少しずつ胸が痛くなった。

同じく、「311の後」を題材にした劇映画に『風の電話』という作品があった。
そこでも描かれていた「草が生い茂った実家」という描写が、ドキュメンタリーとして生々しく記録されていて、正直に言うと、現実から目を背けたいと思ってしまう自分もいた。

「作り手が映像を記録する過程で、対象との関係性が変化してしまう。」
これはドキュメンタリー映画界を代表する監督・森達也さんの作品にも通じるものだと思うけれど、
本作では、その対象が「家族」になっており、現実から目を背けずに「記録すること」にこだわる監督の覚悟には、言葉では簡単に言い表せない複雑な気持ちになった。

ただ、
これから先も監督が記録する映像を観ていたいと思った。

参考
監督のtwitter
https://twitter.com/sukoyaka_m/status/1255474971339567105?s=19
(本編はコチラから、期間限定で鑑賞できます。)

1994 — 『手記』(2015)
https://nandemomemosuru.tumblr.com/post/612283868256632832/%E6%89%8B%E8%A8%982015
(本作のプロトタイプとなった短編ドキュメンタリー『手記』と監督の雑感。)
tetsu

tetsu