優しいアロエ

グレタ GRETAの優しいアロエのレビュー・感想・評価

グレタ GRETA(2018年製作の映画)
3.6
 美しすぎる66歳、イザベル・ユペールの怪演が光る。ヌルヌルと細胞レベルで動く面差しは芸術品の域。「表情の機微」という言葉は彼女のためにある。そして、華奢なイザベル・ユペールがむっちりしたクロエを追い詰めていく。ここに本作の真髄がある。

 とはいえ、多くの人の指摘通り、グレタがサイコである理由(「歪曲した母性」)は、割と序盤で明かされてしまう。設定自体は大変興味深いものの、さらに掘り下げられていくわけではなく、あくまでホラー映画を成立させるための設定にとどまっていた感はあった。

 しかし、主演2人の魅力とホラー映画さながらの脅かし演出によって、本作はかなり持ち上がったと思う。対位法的な音楽の使い方やアクセントとして入るグロテスクなシーンをはじめ、上品と下品を小気味よく分散させたあたりもよい。

 ほかにも夢オチをミスリードに使ったりなど気に入ったところはいくつか挙げられるが、そうはいってもやはりイザベル・ユペールの恐ろしい演技に尽きる作品であった。
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