エソラゴト

ジュリアンのエソラゴトのレビュー・感想・評価

ジュリアン(2017年製作の映画)
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冒頭の数十分、裁判所でのある夫婦の離婚調停の審問が淡々と執り行われるところからこの作品は始まります。

ドキュメンタリーを思わせるこの第三者的視点や劇伴もなく生活音のみの音響演出は同じヨーロッパ出身のダルデンヌ兄弟の作品を彷彿とさせますが、終盤にかけての怒涛の展開にはドキッとさせられます。

常軌を逸した父の行動はまるで斧を銃に持ち替えたあの傑作ホラー映画の狂気の姿にも重なります。自分勝手で強権的なこの父の振る舞いには同情の余地など一切皆無なのは間違いないのですが、どうしてそしていつからこうなってしまったのか?…人物背景がとても気になりました。

昨年鑑賞した『ウインド・リバー』同様、社会問題を直視したドキュメンタリータッチな作風ながらも後半のスリラー描写などきっちりとエンタメ作品として昇華させている点は、本作が長編作品初監督ながらも見事な演出力を発揮したグザヴィエ・ルグランの確かな手腕といえるでしょう。

また今作とほぼ同じキャストで製作されたという前日譚的短編作『全てを失う前に 』もソフト化の際にボーナス映像として勿論追加されるはずなので、そちらも併せて鑑賞してみたいです。




そして丁度今作を鑑賞したタイミングでここ日本でも痛ましい事件が起こりました。親から児童虐待に遭っている子供が発したSOSをあろうことか専門機関がその親に知らせてしまうという大失態…。

つい先日も児童相談所への児童虐待の通告が過去最高の8万人を超えたという警察庁の発表があったばかり。

自分の身近ではそういった事態や状況はまだ起きていませんが、将来直面した場合どのように立ち振る舞うべきなのか、最善の策は何なのか…様々な思いが頭の中を駆け巡りました。