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モリのいる場所のmakoのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
4.0
《2018#154》

沖田修一監督のティーチイン付で鑑賞しました。
沖田監督は大好きな監督の一人なので直にお話が聞けて嬉しかったです。

熊谷守一の事はこの映画を観るまで知らなかったです。
こんな画家がいたんですね。
晩年の30年間、正門から外へは出たことがないそうです。でも一度だけ垣根づたいに勝手口まで散歩したそうです。

映画は昭和49年のある1日を描いた映画です。
実在の人物で画家の映画ということでお堅い映画かなと思いきや、そこは沖田監督なのでクスッと笑え、ちょっとファンタジーな場面もありで面白かったです。

庭には草や木が繁り、そこには猫や蝶や蛙、蜥蜴(かな?イモリかな?)、蟻、池にはメダカ等いて、それを守一は飽きることなく眺めるのを日課にしていました。
この庭が実によくできていました。

守一は人(外部)と接するのが苦手なようで、奥様の秀子さんが間に立って守一をサポートしていました。
文化勲章を授けるという電話に、守一は「いや、いい。そんなものもらったら、人がいっぱい来ちゃうよ。袴履きたくないし。」と言い、秀子も「ああ、いらないそうです」と受話器を置くシーンが物語るように欲も名誉にも興味がない人物だと分かります。なので、世間からは仙人のようだと言われていたそうですが、本人はそれを嫌っていたとか。

熊谷守一を演じた山崎努が何とも言えない不思議な魅力でした。
奥様の秀子を演じた樹木希林は安定感があり、守一を大きく包み時に守り、尊敬する様を上手く演じていました。

劇中の音楽が西部劇のような曲が流れたりしてそれも面白かったです。

家に訪れる人達も個性豊かでそれぞれハマってました。

印象に残った言葉がありました。
近隣に建設中のマンションのオーナー(吹越満)と現場監督の岩谷(青木崇高)が来た時に、岩谷が偶然守一とトイレの前で出会うシーンがあり、その時に守一が言った言葉です。
岩谷の子供の絵を見せてもらい感想を聞かれた守一は「下手だ。 下手でいい。上手は先が見える。下手も絵のうちです」
普通ならお世辞を言うと思うけどそんなことはなく、でもちゃんと絵を認めてあげている温かさを感じました。

この映画を観て熊谷守一の絵を観たくなりました。
素朴で単純化された画風を観た昭和天皇が冒頭で仰る「これは、…何歳の子供の描いた絵ですか?」にはウケました。
昭和天皇役が林与一だとは気づかず後で知り驚きました。

ほんわかした気持ちになれる映画でした。

パンフレットに監督のサインを頂けるということでパンフレットを買いました。
このパンフレットの内容も良かったです。


✤上映後、沖田監督のティーチインがあったのでその時のお話を書きます。コメント欄にネタバレ表示で書きますので興味がある方は見てみてね😊✤


劇場鑑賞#75/2018
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