エミさん

グッドランドのエミさんのレビュー・感想・評価

グッドランド(2017年製作の映画)
2.5
TIFFにて。
ある男がドイツからルクセンブルクの小さな村にやってくる。村人たちに最初こそ怪しまれるものの、割とあっさり受け入れられて、住み込みの仕事も斡旋された上、村の若い女性とも親密になる。
「え!?なんだこれ!?なんでこんなにトントンと事が上手く運んでいくんだよ!?」と思わされる。
普通の日常が淡々と進むその中に、実は様々な伏線が露見してくる。主人公が何かワケありで流れて来た事だったり、村の長らしき男性がしきりと「楽器は弾けるか?」と聞いてくる。この男性、市長でも村長でもないのだが、村の伝統楽団で団長をしており、何故だか権威を持っている。それというのも、ヨーロッパのこの近郊では、村ごとに楽団があって、脈々と伝統が受け継がれている。つまり楽団こそが村のプライドであり、アイデンティティでもあるのだ。楽器を演奏する能力は必要不可欠であり、村に馴染むためには必要な能力なのである。

人は社会的な生き物なので、どこかのコミュニティに属さないと生きていけない。コミュニティに馴染めないものは没落が待っている。
「何でもいいから自分の特性を自覚しているものが、適材適所に就いて人生を制していくんだ」ということが、実にアイロニカルで、観終わった最後、主人公であるドイツ人男性の末路に「わあぁ、そうなったか…」と、恐怖で震えが立った。冒頭の順風満帆さが、なおラストを際立たせて恐怖を掻き立てて、上手い構成だった。