アニマル泉

殴られる彼奴(あいつ)のアニマル泉のレビュー・感想・評価

殴られる彼奴(あいつ)(1924年製作の映画)
4.3
シェストレムが描く道化師ロン・チェイニーの復讐劇。全てを失った成れの果て。自分のことをHEとしか言えない哀れ。ロン・チェイニーが素晴らしい。シェストレムのヒューマニズムとエンターテインメントは黒澤明に何処か繋がっている。地球儀から円形舞台へ。おびただしい道化師たちのサーカス場面は圧巻だ。本作は本格的なバックステージ物となってる。ノーマ・シアラーがチェイニーのハートの刺繍を縫う片思いのラブシーンが素晴らしい。そしてノーマとジョン・ギルバートのピクニックのデート場面があまりにも美しい。人物の輪郭が逆光気味に浮き上がり、周りの草木が燦燦と輝く、完璧な光線は奇跡である。アイリスアウトとインで真珠のネックレスと花飾りがダブルのも印象的だ。
チェイニーを捨てる妻タリー・マーシャルと研究を盗む男爵マーク・マクダーモットの場面は妻ばかり描いて男爵をほとんど写さないのが面白い。二人の別れの場面も唖然とする妻と男爵のシルクハットで表現している。チェイニーが地球儀を回すカットが何回か挿入されるがクラッチのようなものなのだろうか?学会の居並ぶ教授達とサーカスの満員の大衆の嘲笑が重なる圧力が凄まじい。クライマックスは馬とライオンのカットバック、そして復讐の大惨劇。殴られて笑われてばかりいた男が最後に笑う復讐の物語である。
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