滝和也

バンパイアハンターDの滝和也のレビュー・感想・評価

バンパイアハンターD(2000年製作の映画)
3.8
闇の眷属よ
仮初の客は現し世
の黄昏へと向い
馬車は疾走る…
高貴なる者を乗せ、
攫わられし貴婦人を乗せ。
異形のものに護られて。
それを追う狩人たち!
半身を魔に染めし黒き騎士
もその中に…

「バンパイアハンターD」

菊地秀行原作の吸血鬼ハンターDシリーズの第3作D-妖殺行を妖獣都市、レンズマン、ゴクウの川尻監督を向えマッドハウスが作成した怪作。幻想的にして妖かし、美しくかつグロテスクなそのゴシック・ホラーの世界観はまさにピタリとハマり、Dらしさが前作より感じられます。

ある村からシャーロットという女性が攫われた。マイエル・リンクを名乗る貴族は馬車で彼女と逃亡したと言う。村長たちは二組のハンターを雇う。凄腕と名高いマーカス兄妹とそして…ダンピールのハンターD。マイエル・リンクはバルバロイの民を雇い対抗。激闘が開始される…!

シンプルな逃亡、追撃と言うストーリーは古くからあり、西部劇のスタイル(駅馬車は狙うものと狙われるものが逆)に近い。世界観も西部劇に近いし、シンプルなだけに攻防戦の面白さは伝わりやすい。毎回ながら趣向をこらした使い手やミュータントが出てくるが、このスタイルは対決の構図が組みやすく活躍しており、圧倒的な面白さがあった。

また追跡者であるマーカス兄妹に嫌味がなく、プロ意識が高いハンターであるところも彼らに感情移入しやすく、作劇を見やすくしている。彼らが何らか貴族に対して敵愾心を燃やす理由が薄々見えてくる(末妹は語るが…)またダンピールと言う宿命を背負わされたDもそれは同じ、いや更に深いものだろう…。

故に…途中マイエル・リンクらの秘密がわかった際に驚きと困惑そして…観衆には同時に共感すら覚える複雑な感情が生まれる。ストーリー外面はシンプル、内面は複雑という作りの見事さがある。敵と味方、いや出てくる方々全てに共感、感情移入できるスタイルなのだから。

またダンピール=吸血鬼が戯れに下賤な民と交わってできた子供の意味であり、それの虐げられ方や忌み嫌われる姿は…実は眠狂四郎。転び伴天連に犯され生まれし子であり、その姿青白く妖艶にて、女性を魅了せずにはいられない…そこもまさにダンピールであり、Dである。眠狂四郎シリーズをいくつか見ると類似点が見えるのでおすすめしたい。眠狂四郎が自らの立場になる子は望まず、またそうなりしものへ、複雑な感情になった事が確かあった。

その状況を作りながら、大ボスとなるカミーラがやや弱い(キャラとしても強さとしても)のが作品としての弱さか…。まぁ尺の問題もあろうが…。

今作は塩沢兼人さん急逝後のため、Dの声優さんが田中秀幸さん。ここはやや前者に、軍配が上がるか…。永井一郎さんはご顕在であの人面疽を。二人の掛け合いと言っても永井さんの一人芝居たが…それがたのしい(笑)

やはり、このシリーズは復活を是非望みたい。充分令和でも通じるはず。是非深夜帯でもいいのでお願いしたい…。グレンダイザーみたいにアラブの大富豪が金出してくれないかなぁ…(笑)
滝和也

滝和也