上映時間の半分くらいは松坂桃李がセックスしているシーンを見せられるという挑発的な映画ではあるが、三浦大輔監督は『愛の渦』もそうであったように、根本は人間ドラマを描きたいのだろうと思う。
主人公ふくめトラウマを抱えた登場人物たちが人とつながっていく様子を丹念に描く。
面白いなあと思うのは、普通の映画やドラマにありがちな「トラウマを克服して前に進む」みたいな展開になっていないこと。
主人公の友人は娼夫の仕事を「汚い」と罵るが、その汚い仕事に救われている人たちの物語であり、彼ら彼女らにとっては必要な場所でもある。
故に本作は、特殊な性癖を抱えた人たちを「気持ち悪いもの」として描かず、むしろ必然性すら感じさせるようにひたすら丁寧に描いている。
そして、そこから脱却することを善として決して描いてない。人生暗闇から這い出ることだけが良いわけではなく、暗闇でしか生きられない人もいるからだ。