エソラゴト

ベン・イズ・バックのエソラゴトのレビュー・感想・評価

ベン・イズ・バック(2018年製作の映画)
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たまたまなのかもしれませんが、ここ最近、依存症やその治療施設・グループセラピーなどに纏わるお話(しかも全て実話)をほぼ連続で鑑賞しています。

実話である事からも主人公の過去の記憶を辿りながら物語が進む為、割と頻繁に過去と現在がランダムに映し出されその度に頭の中が混乱する事がままありました。

断片的で曖昧な人間の記憶を辿る表現方法である事とまた一定の緊張感を持続する為の手法なのかもしれませんが、今作ではそういった過去の回想シーンが一切出てきません。

フィクションである事も関係しているのかもしれませんが、彼の身の上に起こった事柄の説明を物語の中に上手く滑り込ませている演出は素晴らしく感じました。(特に主人公のベンがなぜ薬物依存に陥ったのかを表現するくだりなど)

物語の推進力と緊張感を持続させる手法としてはサスペンス的要素も上手く盛り込まれており、昨年鑑賞した『ウインド・リバー』のように現実に起こっている問題提起をエンタメ作品として昇華させている所も見応えがありました。

勿論、母親ホリー役のジュリア・ロバーツ、息子ベン役のルーカス・ヘッジズの好演が光っていたのは言わずもがな。(ジュリア・ロバーツがこの役でアカデミー賞の女優賞候補に挙がらなかったのがとても不思議なくらい)

「帰宅」「回復」そして…。題名の『ベン・イズ・バック』の意味を冒頭・中盤・ラストできちんと提示し回収している点も特筆すべき点でした。