牛猫

港町の牛猫のレビュー・感想・評価

港町(2018年製作の映画)
3.0
岡山県にある港町、牛窓町を訪れた撮影クルーがそこに根付く人々の暮らしを映し出していくドキュメンタリー。

モノクロの映像に音楽もなにもつけない静かな作品。ただでさえ過疎化が進む静かな港町の様相をより一層際立たせていたように感じた。静かすぎて眠くなってしまいそうになるけど、漁師のおじさんから、魚屋の女店主、客の夫婦に、墓参りの女性とカメラで追う対象がコロコロ変わるおかげか、不思議と飽きずに観られる。
港町につきものである猫の存在も癒される。ただ、餌をあげるのであれば避妊手術もしっかりやって欲しいなと思った。あと、猫に牡蠣を与えてはダメ。

最後に長々と語られるクミさんの世間話。ほとんど聞き取れなかったけど、街のあれこれを話しているのかと思ったら、唐突に自分の過去にまつわるシリアスな内容になっていって、撮影クルーの困惑が伝わってきた。継母との関係や、息子の喪失など、とてもサラッと流せるような内容じゃないのに、まるで井戸端会議でもしているかのようなトーンで語られていく。
これが本当のリアリティだと思った。
空き家だらけになった路地を案内しながら、撮影クルーにいつ帰るのか問いかける姿がなんとも寂しそうで胸が痛くなった。

かつては賑わっていて人々の温度が感じられた港町が衰退していってしまうのは悲しい。
牛猫

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