しぇんみん

日日是好日のしぇんみんのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.0
大学生の典子は、母の勧めで従姉妹の美智子と茶道を学び始める。

師匠となる武田先生は、「まずは形から」と茶道の所作を延々と繰り返してみせる。

戸惑いながらも稽古を続ける2人。

やがて大学を卒業し、美智子は茶道から遠のくが、志望した出版社に就職できなかった典子は、アルバイトをしながら茶道を続ける。

そして典子は、「茶道」の魅力と本質に少しずつ気づき始めるのだった...。

なんと言っても、樹木希林の存在感に尽きる。

包容力があり、時に厳しく、ちょっと嫌味もある茶道の先生を生き生きと演じている。完全な人格者ではない、人間味に溢れるその人物像は、リアルさを感じさせる。

そこに人間味を感じるからこそ、父を亡くした典子を慰めるシーンが色づき、グッとくるのだろう。

黒木華も大健闘。

自分の不器用さを嘆き、他の弟子たちと比較して自分の才能の無さを嘆き、それでも徐々に茶道の魅力と本質を理解してゆく姿は、まさにどこにでも居る等身大の女性だ。

その豊かな表情は、初心者の頃の無邪気な好奇心を、ベテランとなってからの翳りと色香を見せる。

パッと開いた大輪の華、というイメージではないが、しっかりとした演技力で魅せる、数少ない女優の一人だと思う。

淡々とした静かな演出も好み。
「音」の描き方、特に典子が水とお湯の音の違いに気づくシーンが印象的だ。

茶道は嗜んだことはないが、その教室の空気も感じられる。季節ごとに軸や茶器、釜までも合せ、四季と世界を楽しむ精神が描かれている。

また、書道を嗜む身としては、題名となった『日日是好日』を始めとする、時節に合わせた書の掛け軸バリエーションも楽しかった。

総じて、鑑賞後に大変心地よくなれる映画だった。

はなまる!!

2020/01/30
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