大学生の典子は、母の勧めで従姉妹の美智子と茶道を学び始める。
師匠となる武田先生は、「まずは形から」と茶道の所作を延々と繰り返してみせる。
戸惑いながらも稽古を続ける2人。
やがて大学を卒業し、美智子は茶道から遠のくが、志望した出版社に就職できなかった典子は、アルバイトをしながら茶道を続ける。
そして典子は、「茶道」の魅力と本質に少しずつ気づき始めるのだった...。
なんと言っても、樹木希林の存在感に尽きる。
包容力があり、時に厳しく、ちょっと嫌味もある茶道の先生を生き生きと演じている。完全な人格者ではない、人間味に溢れるその人物像は、リアルさを感じさせる。
そこに人間味を感じるからこそ、父を亡くした典子を慰めるシーンが色づき、グッとくるのだろう。
黒木華も大健闘。
自分の不器用さを嘆き、他の弟子たちと比較して自分の才能の無さを嘆き、それでも徐々に茶道の魅力と本質を理解してゆく姿は、まさにどこにでも居る等身大の女性だ。
その豊かな表情は、初心者の頃の無邪気な好奇心を、ベテランとなってからの翳りと色香を見せる。
パッと開いた大輪の華、というイメージではないが、しっかりとした演技力で魅せる、数少ない女優の一人だと思う。
淡々とした静かな演出も好み。
「音」の描き方、特に典子が水とお湯の音の違いに気づくシーンが印象的だ。
茶道は嗜んだことはないが、その教室の空気も感じられる。季節ごとに軸や茶器、釜までも合せ、四季と世界を楽しむ精神が描かれている。
また、書道を嗜む身としては、題名となった『日日是好日』を始めとする、時節に合わせた書の掛け軸バリエーションも楽しかった。
総じて、鑑賞後に大変心地よくなれる映画だった。
はなまる!!
2020/01/30