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とんかつDJアゲ太郎のtetsuのレビュー・感想・評価

とんかつDJアゲ太郎(2020年製作の映画)
3.4
二宮健監督の最新作と聞き、鑑賞。


[あらすじ]

とんかつ屋の息子として生まれ、店で働きながらも、地元仲間とフラフラした毎日を送る青年・揚太郎。出前の仕事をきっかけに"DJへの憧れ"を抱いた彼は、思わぬ方法で夢への大丈夫だったようですが、第一歩を踏み出すが……


[感想]

出演俳優の度重なる不祥事という以前に、そもそもの題材が異色過ぎて、メインターゲット層の若者にさえ、若干、スルーされてしまった印象の本作。
(人気作であれば、ほとんどの座席が埋まるはずの、公開2日目・大阪のシネコン・夜の回で、人がガラガラだった。)

いかにも(良い意味で)くだらなそうな予告編に、期待値をそこそこ下げた状態で鑑賞すると、予想以上の満足度があり、楽しかったです。

そして、不謹慎ながら、問題の出演者による発言が、あまりにも皮肉すぎて、笑ってしまいました。(詳細は後述。)


[豪華出演陣の絶妙な扱い]

未だかつてないほど、がむしゃらな演技で、もはや好感しか抱けない主演の北村さんだったり、ご都合主義な行動にツッコミたくなるものの、めちゃくちゃ可愛い山本舞香さんだったりと、メインキャストの名演が光る本作。

その一方で、脇を固める俳優陣の絶妙な配置も興味深かったです。

カメオ出演にしては豪華すぎて、物語から浮いてしまっている3名の俳優や、フワちゃん、DJ KOOさんの登場には困惑するものの、片岡礼子さん、川瀬陽太さんといった実力派が、あくまでメインキャストを引き立たせる立ち位置として使われているなどなど……。

出演者の多さには、『コンフィデンスマンJP』や『ミックス。』などの古沢良太さんの脚本作品に通ずる「豪華な無駄遣い」感が否めないものの、それぞれの役者が絶妙な役柄に選ばれていたのは見事。

彼らによって構築された空気感は心地よく、「もし、続編があったら観たい!」と思えるほどには、愛らしい世界観でした。
(何気に、小村昌士さん、松本ファイターさんといったニノケン作品お馴染みキャストのカメオ出演も楽しい。)


[意図せずして生まれてしまった名(迷)言]

本当に不謹慎で申し訳ないのですが、劇中に登場した何気ないセリフが、公開直前の度重なる不祥事によって、完全なる皮肉にしか聞こえないのが、むしろ、見所ともいえてしまう作品にもなっていました。

全体的にギャグがスベり気味な劇中で、伊藤健太郎さんと伊勢谷友介さんの二人のセリフには、「狙ったのか……?」と思えてしまうほどに、鋭い切れ味が。

とあるレコードの名盤について解説する伊勢谷さんが、しれっと「(このレコードは)21世紀最大の"〇〇o〇(自主規制)"だ。」と言い出したり、クライマックスで颯爽と登場する伊藤さんのセリフ「まんまと……」という部分に、"検挙"の2文字が浮かんでしまったり。

もう、これは、受け手である筆者に問題があるのですが、あまりにも切れ味抜群のセリフには、どうしても、笑いが堪えきれませんでした。汗
(あと、主題歌『Run away babys』は、さすがに皮肉すぎるだろ……。苦)


[おわりに]

単なるおバカ映画にもなり得た題材を、クールなカット繋ぎ&絶妙な選曲センスで、監督独自の作品として完成させた本作。

序盤こそ、音楽を流しているだけの主人公に「DJケミカル枠じゃない?」と肩透かしを食らうものの、「とんかつDJ」らしいクライマックスには、かなり興奮する一作でした。
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