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エンテベ空港の7日間のericaのレビュー・感想・評価

エンテベ空港の7日間(2018年製作の映画)
3.3
すごく今更のレビュー。笑
『テルアビブ・オン・ファイア』を観て思い出した。

実話ベース。
1976年に起きた「エンテベ空港奇襲作戦(通称:サンダーボルト作戦)」を、主にテロリスト視点で描いた作品。
うーーーん、難しい上にすっきりしなかった。

でも、監督の"わかりやすい映画にはしたくなかった"っていうインタビュー記事を読んで納得。
端から万人受けする映画を作ろうなんて気はさらさらないんだなぁと
テロ事件の様子とコンテンポラリーダンスをクロスカッティングで見せてくるような独特な演出もそうだし、テロリストの背景をぼんやりしか描かないあたりもそうだと思う。

とにかく終始気になって仕方ないのが、あのコンテンポラリーダンス。
イスラエル軍の兵士とその恋人のダンサー。
これは重要な伏線だと、最後に絶対何かあると気を張って観ていたけど、結局よく分からなかった。。
あの音楽自体もすごく不思議な感じがするし、ダンサー達の動きも独特で意味深。
この既成のダンスを本編に起用した意図は…?
意味わからなすぎてモヤモヤしすぎて、鑑賞後すぐに調べた。笑

まずあの音楽。
"Echad Mi Yodea"っていう曲名で、英語に訳すと"Who Knows One?"。
なんとこの曲、イスラエルの過越祭で歌われる伝統的な「つみあげうた」らしい!
イメージとしては、"12 Days of Christmas"に近いと思う。
歌詞の意味を調べてみたら、ユダヤ人にとって大事な教訓やモチーフが全13番に渡って列挙されている。
なんとなく不気味な曲調に感じるけど、ユダヤの子供たちが大切な教えを楽しく学ぶための歌らしい。

イスラエルにとってこんな重要な歌が使われていたとは…👀

そして、あの前衛的なダンス。
ユダヤ教の超正統派の衣装(黒スーツにハット)を着用したダンサー達が、"何か"から解放されていくように、曲が進むにつれて徐々に服を脱ぎ捨て軽装になっていく……ただ1人を除いて。

本作を観た人なら誰もが気になったであろう、あの絶対に毎度倒れこむ1人のダンサー。

まず、あのダンサーは"the faller"っていう役割を担っているらしい。
そもそものこのダンスのテーマが"適合と偏差"。
すなわち、"何か"に対して周囲と同じように適合する者と逸脱する者。
例のダンサーは後者の役割を演じている。

自分で書いてて訳わかんなくなってきたけど笑、とりあえずあのダンスはある種のメタファーとして本編に起用されているということだけはよくわかる。
そして上記の"何か"っていうのがすごく重要で、ここからは自分の解釈だけど、なかなか進展しないイスラエル・パレスチナ問題を仄めかしているのではないかなぁと。
古くからの慣習や考えに囚われていては、一向に平和的な解決はのぞめない。
変化をためらっていると、あのダンサーのように何度もその場で倒れ込んでしまうだけ。
これが現状ってことなのかな……

ものすごく抽象的で理解が難しい作品だった。
とはいえ、7日間に渡る緊張感ある政治的駆け引きはとても見応えがあった。
最近、様々な切り口からイスラエル・パレスチナ問題を取り扱う作品が多いように感じるけど、このテロ事件も、この問題を語る上で欠かせない重要な事件。
映画で観て、学ぶことができて良かった。
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