エソラゴト

ある少年の告白のエソラゴトのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
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思えば昨年の自身ベスト映画にも選んだシアーシャ・ローナン主演の『レディバード』には今作主演のルーカス・ヘッジズと前回投稿した『ビューティフル・ボーイ』主演のティモシー・シャラメが揃って出演していました。

『レディバード』は母と娘の日常を丹念に描きつつ最後はホロッとさせる明るい青春映画でしたが、こちら少年2人の作品は共に家族との関係性を描きながらも題材自体が重苦しく胸を強く締め付けられるという好対照な作品。

そしてまた今作のルーカス・ヘッジズ演ずる主人公ジャレッドは偶然なのかその『レディバード』でも彼が演じた少年の延長線上にあるような役どころ。

今作でも『ビューティフル・ボーイ』同様に親と子の相容れない心情の交錯が描かれていますが、こちらの方がより根が深いように感じました…。ストーリーの焦点が少年の生まれ持っての資質についてであり、ましてやそこに大人の事情や宗教までもが絡んでくるとなると、ある家族が抱えた家族内の問題という領域を遥かに超えてしまっているからです。

それでも、息子の頑なで純粋な気持ちにきちんと理解を示ししっかり寄り添う母親の姿と、全面的な和解とは言わずとも少しずつ歩み寄ろうと努力する父の姿には救いと明るい道筋が見えたように思えました。

…と今作も親子関係の描写がとても印象深い作品でしたが、それよりも何よりも個人的にはここで描かれた「矯正治療」という名を借りた洗脳行為を行う収容施設の存在に対する怒りと憤りの方が上回ってしまいました。

この作品が公開されることでこのような危険な矯正治療施設が現在も尚米国内では存在していることが衆目に晒されることはとても意義のあることだと思います。



追記:ルーカス・ヘッジズの次回作『ベン・イズ・バック』(5/24公開)は『ビューティフル・ボーイ』と同じ題材の母親視点の作品だそうです。これも心して観なくては…。


余談:この作品を観てまず思い出したのは有名五輪メダリストの結婚会見でその夫が発したある発言。当時様々な憶測が飛び交いましたが、その発言には個人的にとても強い違和感を感じたのはよく憶えています。