優しいアロエ

アンダルシアの犬の優しいアロエのレビュー・感想・評価

アンダルシアの犬(1928年製作の映画)
4.3
〈ふたりの夢から始まった、シュールレアリスム映画の金字塔〉 

 「暴力」ではなく「痛み」そのものを喚起するような鮮烈なコラージュ。たった16分間であれよあれよと曲調が変わり、オートマティスムに即したとも云われる離散的なモチーフが目の前を通りすぎていく。
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「これ、一体どうやって撮っているの!?」

 本作はこの驚きに溢れていた。これは小説や絵画では味わえない、映画というメディアの特権的快楽だ。撮影技術や予算をともなう性質上、映画は想像したものを自由に表現できるわけではない。だからこそ、それをいざ表現してしまったとき凄まじいカタルシスを生むのだ。

 たとえば、女性の目玉を剃刀で切り裂くシーン。これは死んだ仔牛の顔を代用しているらしく、強いライトを当てることで人間の肌に見せているのだそう。映画とは“いかに本物っぽくみせるか”を競う、騙しの芸術と云えるかもしれない。

 こうした驚きは、VFXの進歩などにより映画からも間違いなく薄れつつあるが、昔の映画を追っていく際はよいフックになりそうだ。
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