あーさん

千と千尋の神隠しのあーさんのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
4.2
「トンネルの向こうの不思議な出来事」…あなたは子どもに冒険させてますか?

いつも何度でも、観たくなる。
観るのは何度目だろうか?…

改めて今作を観ようと思ったのは、あるフォロワーの方のレビューを読んだから。大げさかもしれないが、ちょっと目からウロコだった。。子育てに悩む母親として大きなヒントをもらった気がしたのだ。
そのレビューを読んだ時、私は今までずっと千or千尋の立場で今作を観ていたと気づいた。はたと初めて大人の視点から観たらどう感じるのだろうか?と思った。

ストーリーはDVDを持っているしテレビでも何度も観ているからわかっている。そして、あまりにも有名なジブリ作品であるから省略!様々な都市伝説や解釈もあるようだが、それも省略!
純粋に「かわいい子には旅をさせよ」「新人の育て方」という大人目線で今作を紐解いてみようと思う。

千尋は何歳だろうか?小学校の高学年?10歳前後と思われる。絶対的な親への信頼が揺らぎ、ちょうど自立心が少しずつ大きくなる頃。両親は目の前にある料理を勝手に食べたりして厚かましいのに、千尋は頼りないが素直で折り目正しい。千尋は…というかこのぐらいの年齢の子は皆そうなのかも。子どもの方が真っ直ぐだから大人より正義感が強かったりする。けれど、その正義感を貫くほどまだ強くはない。アンバランスな千尋…。そこから名前を取り上げられて知らない場所で働くことで、千尋=千は揺るぎない自信を着実に付けていく。ビクビクするだけだった千が、次第に自分の意思をはっきり告げられるようになっていくのは観ていて気持ちが良い!ハクやリン、釜爺、銭婆の力を借りながらも親元を離れて働くことで認められ、確かな自分を掴んでいくのだ。
湯婆婆の息子の坊のミニトリップも、親元を離れて外の世界に出る必要性を証明している。

翻って…自分は親として子ども達に対してちゃんと冒険をさせているか?まだ早いといつも反対ばかりしていなかったか?失敗する前に先回りしてなかったか?時代が時代だけに、危ないと言い始めるとキリがない。。あそこまでは極端な例としても実際、湯婆婆のようになっていないか?
ある教育者が言っていたが「なぜ子どもはゲームが好きか?というと日常の中で制限があり過ぎて冒険できないから、せめてゲームの中で冒険しているんですよ」と。今の子ども達は囲われて甘やかされて学校を卒業したら急に厳しい社会に放り出される。自分でなんとかする力をつけて来なかったらひとたまりもない。習ったことや与えられたことはできても、責任を取ったり人間関係を築いたり自分の力で道を切り開いていくのは相当難しいのである。

宮崎駿の作品はただ楽しいだけでなく、困難を乗り越えていくたくましい子ども像がエンターテイメント性の高い物語の中に描かれている。だから、子ども達はハラハラしたりドキドキしたり、主人公に共感しながら一緒に成長しているような気持ちになれるのだ。トトロ然り、魔女の宅急便然り…。

少し違う話になるが、ゲームもスマホも門限もルールも同じことなのかも。。絶対ダメ!と頭ごなしに禁止したり取り上げたりするだけではなく、なぜ危ないかどこが良くないかを考えさせて、自分で自分を守れるように、物に使われないで使いこなせるように、どちらも育てることが大事なんだと。ルールを破ることで、子どもは大人を試しているようでもある。何故いけないの?と…。破らせないことが目的ではなく、破ったらどうなるかその後のことをきちんと考えさせる根気強さが大人には必要なのかもしれない。怒鳴り立てたり、体罰などで抑え込むことでなく…。見守る、支える。毅然としながらも、ふわっとした優しい包容力が必要。その為には子どもを思い通りにしようというエゴではなくて、大きな大きな器と愛がいるなぁ…。寄り添い導く、千尋がトンネルの向こうで出会った大人達のように。そういう意味で、リンはとても素敵なお姉さんだ。この年頃になると、親ではない誰か…の存在が大事なんだと思う。
簡単ではないけれど、もっと子どもに自分で考えさせよう!決めさせよう!敢えて失敗する体験をさせよう!そして冒険をさせよう!

少し真面目に考えてみた。
個人的考察…。

また一つ、今までとは違う大切なメッセージに気づく歳になったのかもしれない。私はいつの間にか、支えてもらう側から支える側になっていることにはっきり気づかされた。
今度は、どんなメッセージが受け取れるのだろう?支える側を更に支える立場…親ではなくおばあちゃん目線⁈ 笑 銭婆は結構私の理想なのだけど。

そんな風に思うと、これからも何度でも観たくなる作品!

ところでカオナシの行く末、こんなだっけ?…意外にほっこり。。
そこだけ、すっかり忘れてたな〜
銭婆の優しさ、さりげなくてとても好きだ。。

それにしても、宮崎アニメはやはり画が丁寧できれいだった。風のそよぎ、水の動き、空の色のグラデーション、自然描写の細かさに、一つも見逃すまいと目を凝らして観てしまう質の高さ。。
音楽の安定感も素晴らしい!


追記

釜爺の声は今は亡き菅原文太さん、大好きだった。作品の中でお声が聞けて嬉しかった。。
あーさん

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