のん

スパイダーマン:スパイダーバースののんのレビュー・感想・評価

4.3
変化球かつ王道

『インクレディブルファミリー』『シュガーラッシュ オンライン』というディズニーアニメの強敵を蹴散らして本年度のアニメーション賞を総なめにしている本作だが、観れば納得。ディズニーにも邦画アニメにも実現できない驚異のアニメーションがそこにはあった。


マルチユニバース(多元宇宙)を題材に、5人のスパイダーマンが登場する本作は、『ハンソロ:スターウォーズストーリー』を途中で降板させられたクリス・ミラー&フィル・ロードがディズニーに対する鬱憤を晴らすが如く、映画そのものが変幻自在に飛び回るアイデアと創意工夫に満ちた作品となっている。


それぞれ別の並行世界から参入してきたスパイダーマンは、モノクロからクールジャパンな萌えキャラ風、果ては豚であったりと、全て世界観は異なっているが、それぞれが一つの世界で絶妙に溶け込んでいる。


それを実現しているのが、一見アメコミチックなCG映像で、平面だけど立体的、立体だけど平面という、斬新な映像表現で観客を飽きさせない。


しかし、本作の最大の魅力は、その完成された脚本にある。これまでの実写版スパイダーマンとの明確な差別化を図りつつ、『デッドプール』のようなメタな台詞回しも随所に盛り込んだうえで、最後は王道展開に落とし込む。


なんだか物語がやたら散漫だった『ヴェノム』とは雲泥の差で、スパイダーマン史上最高傑作という謳い文句も嘘ではない、極めて洗練された傑作である。
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