ひろぽん

劇場版ポケットモンスター みんなの物語のひろぽんのレビュー・感想・評価

3.6
劇場版『ポケットモンスター』シリーズ21作目

人々が風と共に暮らす街・フウラシティで行われる風祭りの最終日には、伝説のポケモン・ルギアが現れるといわれていた。サトシとピカチュウは、様々な悩みを抱える5人の仲間たちと出会い、みんなの絆で未来を変えていく物語。


前作に引き続き今作もアニメとは全く別のオリジナルストーリー。

過去のトラウマでポケモンを嫌うようになったおばあさんのヒスイ、嘘をつき続けてきた見栄っ張りなおじさん・カガチ、人と話すことが苦手な研究者のトリト、過去の大きな怪我で大好きな陸上を離脱し目標を見失ってたポケモン初心者の女子高生・リサ、ゼラオラを守ろうとした少女・ラルゴ、そしてサトシのみんなの物語。

これまで劇場版の監督から新たな監督に変わり、作品の雰囲気がガラッと変わった。

これまでは珍しい幻や伝説のポケモンを利用する悪と対峙してきたり、暴れ回る伝説のポケモンを阻止しようとしてきたが、今作はポケモンというより人間の泥臭い部分を全面的に感じさせる群青劇となっている。ポケモンと人間の共生や、これまでの過去と向き合いどう決別し、何を選択して、どのように人間として成長していくかが今作のテーマとなる。5人のキャラクターの一人一人にドラマがあり、それぞれの心境を描きながら、サトシがそれを補うかのようにヒーロー枠として添えられているので感情移入がしやすい構成となっている。

そのためバトルは全体的に控えめで、人間ドラマがメインで繰り広げられ、ポケモンが添えられる程度なので、激しいバトルが見たい人にとっては物足りないかもしれない。

また、サトシ以外の5人に焦点が当たるのでサトシが主人公というより、6人全員が主人公であるかのように感じた。年齢や性別も分散してバラバラになっているので、どの世代の視点でも見れるみんなの物語というコンセプトに相応しい演出となっている。

5人の行動が全て繋がる構成で、起こるべくして起こった人災にどう対応していくがが今作の最大の見どころ。5人のキャラクター性を存分に活かしているのは良いのだが、群青劇として尺が足りておらずそれぞれのキャラのバックグラウンドの深掘りが足りてない点が少し残念なところ。

街並みや自然の景色などは過去一美しく細部まで綺麗な作画になっているのが素晴らしい。その反面、幻のポケモンであるゼラオラや、伝説のポケモンのルギアのインパクトが弱いしパッとしない印象だった。

登場するポケモンたちはみな可愛かった。特にピカチュウとイーブイの絡みは癒し。この作品の公開後に『𝕃𝕖𝕥'𝕤 𝕘𝕠ピカチュウ』と『𝕃𝕖𝕥'𝕤 𝕘𝕠イーブイ』が発売されたのでそれが発売前の伏線だったのかも。

嘘つきおじさんのカガチとウソッキーの絡みの話が特に感動的で1番好きだった。ロケット団が完全なる悪として描かれているのも印象的。

全体的に人と人との因果関係が上手く描かれており、ラストに全てが繋がるという演出が巧みだった。これまでにない斬新な設定だったが、個人的にはそこまで印象に残らず可もなく不可もない作品だった。決して悪い訳ではないが、良くもないという感じ。ポケモンを知らなくても楽しめる作品。

“ポケモンパワー”
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