Oto

響 -HIBIKI-のOtoのレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
3.5
原作を最新巻まで読み直してから観るというのを珍しくやってみた。これからの人は予習しない方が楽しいと思う。

コンパクトにスピーディーに纏めていて凄いと思ったけど、プロットは一切はみ出していなかったので、少し退屈。見せ場であるバイオレンスギャグや突飛な行動は全て原作者の手柄なので、演技とアヤカウィルソンの水着と平手ちゃんのコスプレくらいしか見所がない(砂場でヤンキーが足くすぐらんかい!)。小説原作なら映像を作る面白さがあるけど、漫画原作だから絵も決まってるし。改変は難しいんだろうけど…。

ラストのあっけなさが意外だったけどあの後に後輩が入るから妥当か。冒頭だけ変な視点入れてたのはよくわからなかったけど、マイク投げるシーンの演出は面白かった。原作では顔隠していたから、受け応えさえせずに投げて終わりで直接対決はなかったから上手く改良してる。
柳楽優弥とのホームのシーンも緊張感あって面白い。謝るんだ!っていう驚きがあったけど、その後ちゃんと伏線として効いてきて、昨今の謝罪文化やマスコミに対する疑問として良い作用だった。
原作では「世間から顔を隠す為に悪者と戦って更生させる」という展開を10巻くらいまでダラダラ繰り返し続けているので、それを捨てたのが英断。一番伝えたい「他人のためじゃなくて自分が作りたいものを作り続けろ」と「世間じゃなくて目の前の人間と対話しろ」「強そうなだけのやつにビビるな」っていうメッセージ性が伝わりやすくなっていて、作り手として響く部分があった。

時間の制限的に登場人物もかなり削っていて、たしかにラノベ展開入れないなら花代子は要らないし納得したけど、本当はサイコパスの涼太郎とか、同時受賞の豊増幸の親子ストーリーとか、山本春平の再起とかに一切触れていないので、天才の周りにいる人間の視点がリカに限定されるのはやや勿体無いと感じた。『ワンダー』みたく、もう少し多層的な見せ方が出来た気がする。後輩を入れれば続編は出来そうな気がするけど。

歌声を聴かせなかった『BECK』と同じく、小説の中身をほとんど見せない残念さもあるけど、まぁそれは原作の罪なので仕方ない。直木や芥川とるような名作って全然読めてないので、たまに読むようにしたいなとも思う。直木賞は純文学=アート、芥川賞は娯楽作=エンタメ、という説明を原作ではしていたけどそこも全く触れてなかったな。

平手ちゃんのスター性はやっぱり圧倒的。キャスティングが合ってるのもあるけど、強さの中に可愛さがある演技。世間の期待に応えなきゃいけないアイドルとしての自身の葛藤が乗り移っているような演技。
欅はエースを死守したいだろうけど、踊ってる時より全然楽しそうだし、女優業増やしてあげたほうが幸せだろうなと思った。

いま一番映画化して欲しい漫画は『彼方のアストラ』です。お願い。
Oto

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