小さなスケールで大きなテーマを描く細田守の新境地
一貫して絆を描き続ける細田守監督の最新作は、これまでのどの作品よりも小さな規模で紡がれる家族の物語。
甘えん坊の男の子くんちゃんの「ふしぎな」経験を通じて成長する様子を描いている。
『おおかみこども』『バケモノの子』に続く監督の「子育て3部作」ともいえる内容で、4歳児のどうしようもない駄々っ子ぶりや、子育てに関心がなかった父親の奮闘など、おそらくは監督自身の体験がアニメに反映されている。
注目すべきは、その規模の小ささで、アクションも劇的な展開もほとんどない。ただ、しかし、日常の小さな光景を細かく描写していくことで、観ていて幸せな気持ちになれる。
前作『バケモノの子』が全方向に向けた万人向けのアニメだとすれば、本作はより内向きに、内面の部分を強調しており、アニメという何でもありな分野で、日常のディテールを鮮やかに描くという不思議な映画になっている。
とはいえ子供、大人、誰が見ても楽しめる、くすりと笑えて家族の壮大な繋がりを視覚的に表現したクライマックスも見応えあり。
またまた夏にふさわしいアニメーションの傑作が誕生したように思う。