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未来のミライのtetsuのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
4.5
「いや、これ、発達心理学のすごく良い教材では?!」

妹が生まれ、お兄ちゃんになった"くんちゃん"
両親の愛情を一心に受ける妹のミライちゃんが気に入らないくんちゃんは、逃げ出した家の庭で不思議な体験をするのであった...。

というわけで、
エヴァの予告編解禁にそそられて、初日に友達を引き連れて観賞させていただきました。笑
率直な感想を言わせていただきますと"傑作"でしたね!

たしかに、タイムトラベルの設定や物語の語り口が少し変わっていて、好き嫌いが別れるのは納得ですが、いやはや、作品のメッセージがピタリと自分にハマりました。

「人と人との繋がり、過去と未来の繋がり、
様々な物事が結びついて、今の自分がいる」
そんな日本のアニメらしいメッセージを"木"という象徴を用いつつ表現したのが見事でしたし、これまで以上に監督自身の視点が色濃く出ていて、個人的にとても好きでした。

と、そんな感想はさておき、
最初に「本作が発達心理学の良い教材だ」と言いましたが、それはなぜかというと子供を二人もつ細田監督が自身の経験を元に本作を作ったから。
(事実、製作のきっかけは息子の「大きくなった妹とあったよ。」という発言だったそう...。)
意図していないにしても、リアルな子供たちの心理描写や行動を描いたことで、結果として発達心理学が学べる映画になっていました。

ここからネタバレ
σ( ̄∇ ̄;)
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たとえば作中、
くんちゃんは「くんちゃん、好きくない...。」と自分の思い通りにいかないことがあると、すぐに言っていましたよね...。
しかし、これ、発達心理学の分野では、当たり前のことなんです!
幼い頃は他者の考えという概念がなく、自分の思っていることと相手の思っていることを同じだと考えること(このことを発達心理学では「自己と他者が未分化な状態」といいます)が一般的で、くんちゃんが他者に苛立つのもおかしなことではないんですよね...。

また、作中、
くんちゃんは親の言うことにあえて反抗しようとするシーンが多々ありました。
「片付けて」といわれたオモチャを、逆に広げちゃったり...。笑
これは、まさに発達心理学の幼児期に起きる反抗期といえるでしょう。
反抗期といえば、中・高生に起こるイメージが強く、意外に思った方も多いかもしれませんが、それは実は第二期の反抗期で、第一期は幼児期にあったりします。
そう考えると、本作の1シーン、幼児期の小さなくんちゃんが、第二期の反抗期のくんちゃんに出会うシーンは、とても興味深かったですね~。


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世間では賛否両論が分かれている本作。宣伝において、あまりにもタイムトラベルやファンタジーの要素を押し出しすぎたのが、その原因のように感じましたが、ぜひ、それ以外の点にも着目してほしい作品ですし、むしろ、僕のように大学で発達心理学を学んだ方にも観ていただきたい作品でした!

というわけで、
映画の帰り道、街中を歩いていると、
リアルくんちゃんとミライちゃんのような子供たちを連れたお母さんがいて、その面倒を見る偉大さに心底感動した、そんな観賞体験でした!

参考

『未来のミライ』子供を主人公にした理由 - シネマトゥデイhttps://www.cinematoday.jp/news/N0102241
(細田監督が映画の発端を語っています。)

『未来のミライ』が賛否両論になった「10」の理由  | シネマズ PLUS
https://cinema.ne.jp/recommend/mirainomirai2018072805/
(確かに好き嫌いが別れるのもよくわかります...。)

小野寺系の『未来のミライ』評:いままでの細田作品の問題が、作家的深化とともに表面化|Real Sound|リアルサウンド 映画部
http://realsound.jp/movie/2018/07/post-228005_1.html
(中々、説得力のある批判で納得しました。)

発達心理学1.乳幼児の心理~児童期の心理(心理学総合案内こころの散歩道)
http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/koneko/3hattatu.html
(発達心理学に興味を持った方は、是非ネットで色々と調べてみてください。中々、面白いです!!)
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