むぎちゃ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのむぎちゃのレビュー・感想・評価

3.9
ド派手でシンプルな勧善懲悪映画に溢れていたかつてのハリウッド
しかしベトナム戦争を通じて「でも現実ってそうじゃないよね…」という社会のうねりから生まれたアメリカン・ニューシネマに圧倒され、華のハリウッド映画は次第にその影を潜めてゆく……多分その前夜の物語

一斉にネオンが灯るハリウッドの街並みのもと、子役に励まされるアル中俳優、日々『努力』を欠かさない自由奔放スタントマン、自身の出演作を陽気なクソ態度で観る女優が生きていた
現実と虚構の登場人物が交わるとき、おとぎ話のハリウッドが生まれる

タランティーノ映画独特の「あってもなくてもええやろここ」っていうシークエンスがいくつかあったけど、特にあのヒッピー村の不穏さが良かった
あとNHKドキュメンタリーの再現VTRみたいな終盤のナレーションの、うまい具合に不安を煽る演出ね
まぁミスリードな訳ですが

古き良きハリウッドなんて当然知らないし、ヒッピー文化なんて物の本でしか知らない
しかしそれでもシャロンテートの事件位は知っていた自分としては、あの終わり方とタイトルのタイミング、本当に物悲しくて切なくなる…

Once upon a time って表現がタランティーノの「こうあってくれたら良かったのに」っていうifの願いのような気がしてさ、なんかもう…

だってそれまでリアルなドラマ進行だったのに、事件のケリの付け方が「んなアホな」って締め方だったじゃん…あれがもう結局はこの物語がフィクションでありおとぎ話に過ぎないっていうある種の諦めみたいでさ、やっぱり切ないよね…

そこも含めて、とにかく映画愛に溢れたタランティーノの感性が爆発したような、ある意味彼の集大成のような映画だった
何かでみたけど、10本で辞めるんだっけ?監督業
次回作が楽しみな監督の一人だね


あとブラピのユーモアに溢れたあのキャラが一番好きだったけど、『面倒事は御免、慎重に慎重を重ねる』ってあの性格が、どことなく『悪の法則』を彷彿とさせて落ち着いて鑑賞出来なくなっちゃった
…トラウマかこれ