レオピン

不道徳教育講座のレオピンのレビュー・感想・評価

不道徳教育講座(1959年製作の映画)
3.6
アンクルトリスで有名な柳原良平のタイトルデザインがオシャレ

道徳教育のモデル都市に選ばれるために文政省(文科省)から視察に来た役人を町をあげて接待する。しかし、このエリート官僚になりすますのが出所間もない詐欺師で変装の名人。日活の名バイプレーヤーたる大坂志郎が主演をはる。

外見は同じでも中身が入れ替わるというよくある設定。韓国映画『人生の逆転』というキム・スンウのやつが面白かったが、こっちは入れ替わられた真面目な役人の方はほとんど出てこない。

三島由紀夫が最初と最後に出てきてナビゲーター役をつとめていた。原作は通俗的な教訓を吹っ飛ばす諷刺エッセイだが、エッセンスを台詞に活かしていた。

本の方では、逆説に満ちた主張で道徳や常識を笑っていた。まぁ世間に道徳づらしてるヤツほど不道徳というのは相場どうりで、ゴシップが成立するのは映画にも出てくる校長一家みたいなのがいるからだ。
長男の長門は相変わらずのヘロヘロ妄想狂で、
妹の清水まゆみはスピードくじで処女を売るエロエロ女学生。 
弟は改造拳銃を忍ばせているイカレたサイコで、  
母の三崎千恵子は欲求不満でムキムキの運転手にヨロめき、父信欣三は校長の立場を利用して教科書会社から賄賂を受け取っていた。

外面を道徳で飾らないといけない人種ほど、不道徳へ一気に雪崩れ込む。日頃から不道徳に体を慣れさせていないからだ。今日も一日悪いことをしたなぁと言って眠りにつくことは健康の秘訣だ。

モラルを笠に市長たちは、さながらロックダウンの町のように、バーに芸者、デモ・ストまでぜーんぶ市が金を出すからといってやめさせる。当時肉体映画と呼ばれたピンク映画までもが営業を禁じられた。
肉体といえば元祖肉体女優と呼ばれた筑波久子が長門と結ばれる中華料理屋の娘で出演。彼女はこの後、ハリウッドに渡って一から映画制作を学び、『ピラニア』『殺人魚フライングキラー』を世に送り出した。キャメロンの生みの親かもしれない人。
この事だけでも、人間道徳なんか守ってたって小さくまとまるだけだわよってことがよく分かりますでしょ。
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