翌日に結婚式を控えている女性（田中真理）が、元恋人との密通の最中に交通事故を引き起こしてしまう。不服な結婚を強いられている女性の逃避行を、アメリカン・ニューシネマ調に描いている、日活ロマンポルノ。

後に「体制と闘う女神」として崇拝されることになる、田中真理の記念すべきデビュー作。元恋人に逃げられ、孤立無援の状態に陥ったヒロインが、交通事故の被害者（吉澤健）と一緒に逃避行を繰り広げる。

事故被害者となる男は、特殊な境遇に置かれている訳ありの人物。凶暴性を表出させてくる粗野な男だが、徐々にヒロインの境遇との同調が促されていく。その丁々発止のぶつかり合いが、背徳感と躍動感を混交させた、独特のタッチを生み出している。

「結婚という束縛からの解放」が主人公の深層に根付いており、戦々恐々としながらも、現状を楽しんでいるところが醍醐味。また、タイトルの語呂が良いので、早口で言うと「スタンディング・オン・ザ・ハイウェイ」みたいになり、変な脳汁が出てくる。

「ザ・チェイス」を先取りしたかのような無駄にレイプが追加され、「バニシングポイント」に！なんでもセックスつければいいもんじゃないね仮面ライダーじゃあるまいし。ある意味70年代の映画。

• #セックス・ライダー濡れたハイウェイ

アメリカンニューシネマ×ポルノというニュースタイルのエロ映画に挑んだはずが、ドライブ感のない演出に突っ込みどころ満載な勢い重視の脚本、飄々とした吉沢健&熱演しすぎの田中真理といったバランスの悪さによりそれとは別のぶっ飛んだ作品に。でも主役二人が様々な事件に巻き込まれるうちに開き直りしがらみを捨てて快楽をむさぼる様はニューシネマとは違うやけくそながむしゃらさがあって楽しいし、スピード狂な二人が快楽を求める内に究極のカーセックスに挑もうとする終盤もジョルジュ・バタイユの死とエロスを実践しているようで興奮する、ただ車の疾走場面やアクションに比べて肝心のベッドシーンがエロくないのが気になるけどね。

これが映画初主演となる田中真理のややぎこちないが、アバンチュールの最中に人を跳ねて死なせたと思い込み錯乱していく女性をフルスロットルで演じる熱演に眼を見張る。あと白いコートの中は下着だけという『暴走パニック 大激突』の杉本美樹に匹敵する(寒かったのかストッキングは履いてるけど)ありえないスタイルで全編行動する姿に感動するし、そんな彼女を湖でボートを漕がして猛スピードで走る車からガチで避けさせる無茶すぎる運動をさせる演出も最高(そのためかパンチラシーンが異常に多いのがご愛敬)。そんな彼女の熱演を受け止めさらりと流す吉沢健のライトな演技も○。

舞台となる夜の世界や冬の乾燥した空気を見事に表現し、舞台の大半を締める狭い車内のドラマをアングルの工夫などにより飽きずに鑑賞させてくれる山崎善弘のカメラ&直井勝正の照明による仕事振りもこの映画のグレードを高める。特に中盤二人が訪れる朝の靄がかかった湖の美しさはため息が出そうになった。

死体のふりをしてじっと車のなかで待機する吉沢健や、どう見ても生きているのに死体だと勘違いする田中といった主人公二人のコミカルな挙動により、ニューシネマスタイルという御大層なテーマに身構えることなくリラックスした状態で鑑賞できる。

最高のスリルと快楽を求めた二人に訪れる結末はわかりきってはいるが、それでもラストのスタイリッシュな構図が決まっているので良いものを見たという気分にさせてくれる。