のん

来るののんのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.5
ハイパーカオスエンターテイメント


『エクソシスト』や『オーメン』、『シャイニング』といった名作たちに共通するのは、ホラー映画という体裁をとりながら、ジャンルの垣根を超えた普遍的な魅力を放っている点だろう。



川村元気と中島哲也が『告白』以来8年ぶりにタッグを組んだ『来る』は、そんな怪物級の作品に引けを取らない、実に混沌としたエンターテイメント作品として強烈なインパクトを残す。


澤村伊智による原作小説『ぼぎわんが、来る』は、これはもうそんじゃそこらの普通に小説では太刀打ち不可能な強固なエンタメであり、人の醜悪な一面を垣間見る人間ドラマの極致であり、究極のホラー小説であるわけだが、映画版は原作の精神性を極めて忠実に受け継いでいる。




映画の全体6割くらいまではほぼ原作の物語に沿う形で構成されており、得体の知れない何かが近づいてくる恐怖、登場人物たちの底の見えない闇が観る側の心を刺激する。



圧巻は原作とは大きく異なるクライマックスのシーン。視覚と聴覚のすべてに襲いかかり、雪崩のよう全てを飲み込んでいく異様な迫力がある。



ここまで来るともはやジャンル分けが意味を為さず、役者の演技と映像と音、そして目の前の混沌に身を委ねる圧倒的な映画体験が味わえる。決して幸せではないが、超がつくほどストレートなエンターテイメントとして中島哲也監督の現時点における集大成と思う。
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