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来るのacrowのネタバレレビュー・内容・結末

来る(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

エンタメ性が先行してる感はあったけど、なかなか面白かった。ホラーというよりサスペンスとして見ると楽しめた。
妻夫木聡の怪演が光る。


もう序盤の描写が素晴らしいですね。素晴らしい丁寧さで、クソ田舎のクソ寄り合い、新婦の気持ちも考えられない寒い人間の独りよがりな宴会芸ギャグをぶちあげられる結婚式などを描いている。あまりに脳みそスカスカな人間の群れを悪意100%で演出しているので、なんか恨みでもあんのかなと思うくらい…
序盤がつまらないというか、嫁さんがくっそキツい思いをしているのを丁寧に描いているので感情移入しすぎてしんどいという方向の感想。

しかし何をおいても妻夫木聡のクソ野郎演技がハイレベル。
なかでも中盤の地縛霊になって智紗に会いたい!って叫ぶシーン。一見いいシーンっぽいがあの一瞬野崎をチラッと見てて、要は死んでも「あっ人に見られてる!俺は娘の心配をしてま〜す」のポーズをやってる。
ブログの更新然り、こいつは死んでもそんなことやってるというシーンなんだよな。すごい、田原という男が骨の髄まで空虚でつまらないやつであることを表したシーン。素晴らしい演技。
だんだん壊れていく香菜さんも怖いくらい真に迫っている。

ぼぎわんという存在がおそらく英米で子供たちをしつけるために親が話すお化け「ブギーマン」から来ているっぽいことは響きからわかるが、そこに間引き文化や水子供養を混ぜて「子供を狙う化け物」として練り上げたのは上手い。電話を使って田原に偽情報を掴ませたりするシーンもかなり怖かった。
悪いことをした人間をさながら懲らしめるように順番に狙うブギーマン的な面があり、それでいて登場人物どいつも人生に後ろめたさがあるので油断できない。このあたりはサメ映画で殺されていくジョックに通ずるものがある。
かといって田原も最初から空虚な人間だったかというと、過去のちさちゃん失踪の件が影響してそうで、劇中の悪い奴らは最初からそこまで悪いやつではなかったのかもしれないという切なさがあり…。


野崎というグレーな人間を介し、低俗霊あたりから飛び出してきたかのようなクソ強い霊能力者・琴子なども織り交ぜだんだんブッ飛んだ世界観になっていくが、中盤までのしんどさも合わせてある種のカタルシスがあった。

総評としては……風呂敷がでかすぎて畳めてない感はあるが、トータルで見ると人間関係のドロドロと怪異、それを祓うヒロイックさも併せてゴトゴト煮込んだ闇鍋で、なかなか面白かったように思う。


まあ、なんというか、家族の話はよく聞いて労おうと思った。
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