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ぼくのエリ 200歳の少女のacrowのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

好きな作家が世間のしがらみがいろいろありつつもまたいい作品を書いてくださったので、そのオマージュ元として観ておくことにした。
観て良かった。

オスカーの印象が物凄く変わる映画ですね。
「かわいそうはかわいい」なんてネットスラングもあったりしますが、オスカーから受けるイメージが中盤にかけてすごく変化する。

最初はいかにも非力で可愛らしい少年、いじめられっ子で一生懸命ナイフをいじったり殺人事件を追うことでそこに救いを求めるかわいそうで中性的な男の子だけども、中盤にかけてエリの言葉を受けある種のマチズモ、男性的雰囲気を纏っていく。

すると驚いたことに、めちゃくちゃかわいくなくなるんですよね。
顔も何も変わってないのに、表情や立ち振る舞いで一気に小憎たらしくなる。棒でひっぱたいてやり返したあとの恍惚とした表情、勢いづいて自分の手を切って血の契りをエリに迫ったり、エリをむりやり家に入れたりといった振る舞いの変化ですごくイヤな子供になる。
しかしその後またいじめられるか細い子供に戻るとまたあのあどけなさが蘇ってくる。ほんとに不思議な演技力ですよね。

エリについても何か言いたいところなんだけども、エリという魔性の…しかし生きることが苦しい弱者でもある存在に振り回され、そうしているうちに「オスカー」という少年がどんどん背中を押されて変わっていく変貌具合に圧倒されてそっちに気を取られましたね。

そういう意味では、「さよなら絵梨」と題してブッ飛ばしたあの作品の意図するメッセージもわかる気がします。
主人公がもう誰にも振り回されず自分の意志で自分の作品を撮り終わるという意味では、あのオチは最高の表現だったと言えるでしょう。
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