しおえもんGoGo

ヘレディタリー/継承のしおえもんGoGoのネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ミッドサマーの感想に多くの方がこの作品を挙げておられたので。

この監督さん、もうしんどい!本当にしんどいのよ!!
何というか、五感に伝わるしんどさ。
そしてミッドサマーもそうだけど、キャスティングが上手すぎる。

イライラ、慟哭、恐怖、執着、激高、すべてがあまりに生々しいトニ・コレットの演技は凄まじいの一言。
どんどん精神のバランスを崩していく彼女に、もう見てるこっちもグーっと力が入っていく切迫感で辛い。
思えばシックスセンスも何回見ても泣いてしまうのは彼女の卓越した演技のおかげだと思う。

そしてチャーリー役の(子役さんなのにこんなこと言うのも気が引けるけど)見ているだけで不安を引き起こす顔、子供なのに豊満すぎる体、無表情、コッという舌打ち。
鳩の首を斬る、なんて分かりやすい行動がむしろ可愛く見えるほど存在自体がゾワゾワくる。彼女が何か恐ろしい事を引き起こすのかと思ったら、まさかの展開でびっくりしたけど、結局彼女も踏み台に過ぎないという点で可哀想。でも多分彼女は生まれたときから元のチャーリーじゃなかったのだから可哀想でも無いのか?

終盤のアニーのセルフ首斬りは近年まれにみる衝撃映像だったし、ここでもそのザリザリした控えめな効果音がリアルすぎて鼓膜が震えあがる。

色々怖くて色々衝撃的だったけど、でも一番私がトラウマになりそうに恐ろしかったのは、チャーリーが事故に遭った後のピーターをじっと写したあの数分だった。

全身の毛穴が開き、動機は激しく、冷や汗がジワっと出て、視界はキュッと真ん中に寄り、呼吸は浅く、手は冷たく震え、口の中に唾が沸き、耳は鼓動の音がジンジンとし、本当じゃないはずだと思いたいけど怖くてバックミラーが見られない。
「大丈夫」と一言言って、引き返して、ベッドに入る。これは絶対夢だと言い聞かせてるけど、そうじゃないことは分かってる。

彼の恐怖が匂ってくるようだった。

事故の後の身の置き場の無い様子、母親に追い詰められる感じもリアルで、彼が悪魔に乗っ取られてちょっとホッとしたわ。彼はもう苦しまなくていいんだね。

正直中盤までのサイコホラー的な展開がとても怖かったので、終盤の空を飛んだり天井を這ったりする映像には少し引いてしまった。超常現象はちょっと控えめにしてほしかったかも。

この監督さんはめちゃくちゃしんどい人だということは分かったけど、でも次の作品があったら見てしまうだろう。
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