ジェイコブ

タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~のジェイコブのレビュー・感想・評価

2.8
人に触れられる事を恐れる精神障害を抱える中年女性のローラ。セックスもできず、性欲を満たすには、男娼の自慰を見ることであった。ある日、父の介護で訪れた病院で、障害を持つ患者同士によるカウンセリングを目にする。カウンセリングの中心にいる無毛の男トーマスに興味を持ったローラは、彼の後をつけると、彼が別れた妻に病的なほど執着している事を知る……。
ヨーロッパ発の一言では形容し難いドラマ。難解なシーンに加え、静寂と生々しい性的描写など、見ていて愉快になる作品ではなかった。それは、人が目を背けるテーマにクローズアップしているからかもしれない。障害者の性、心の奥底に秘めた性的な欲望など、現代社会では見て見ぬ振りをされている人の本質の一面に目を向けさせられる。
特に印象的なのは、身体障害者の男性の「自分を気に入っている。特にペニスはいい形してる」と言う赤裸々な告白から、「人生は自分を知るための旅だ」という壮大なテーマに着地した事だろう笑。彼は障害をハンデとは思っておらず、むしろ自分よりも健常な肉体を持つはずの人が自己肯定感を持てないことの方を気の毒に思っているのもまた面白い。
人は皆、不完全な存在であり、それぞれ欠けた物を補い合っていきている。病院でのカウンセリングはその象徴であり、共生という理想を体現したものである。
ただ、何度も見たい作品でないのは言うまでもない。