映像が素晴らしく、この作品の伝えたいとしようとしていることがストレートに伝わった。
決してハリウッド映画に負けない映像だったように思う。空母、護衛官、潜水艦などの艦内、戦闘機、戦闘シーンや人物を映す際のカット。自衛隊員の決断の際の苦悩がよくわかり、観客に重い問いかけをしてくる。単純でなく、複雑で、簡単に即答できないようなもの。壮大なスケールのエンターテイメントであり、重厚で、秀逸な社会派映画だ。監督にハナマルをあげたい。
いぶき艦長秋津竜太を演じた西島秀俊さんは、今まで観た映画の中で一番適役だと思うほど、知的で冷静で、胆力のある艦長を見事に演じていた。佐々木蔵之介さん、高嶋政宏さん、玉木宏さん、戸次重幸さん、市原隼人さん、堂珍嘉邦さんなどの役者さんたちの自衛官になり切った感が素晴らしかった。そして、第5護衛隊群群司令湧井継治役の藤竜也さんは、宇宙戦艦ヤマトの沖田十三艦長を彷彿させた。
そして、掘り出し物感があったのは、護衛艦「いそかぜ」艦長浮船武彦役の山内圭哉さん。インパクトのある役で、「この人忘れられない」と思ってしまった。
ネットニュース社の記者本多裕子役の本田翼さんと東邦新聞記者田中俊一役の小倉久寛との絡みも良かった。本田翼さんが演じた記者本多裕子は、複雑で簡単に答えを出せない問いかけをされ、覚悟を問われている私たち一人ひとりでもあるように思う。
内閣総理大臣垂水慶一郎役の佐藤浩市を始めとする政府関係者を演じた皆さん。そして、コンビニエンスストア店長を演じた中井貴一さんも、本当なら自衛官を演じてもおかしくないくらいきりっとした役柄ができるのに、今回は、第5護衛隊群が対処している危機的な状況とは全く反対の世界でのほほんとした人物を演じた。それぞれが、この映画の中で重要な役を演じ、この映画の重い問いかけを見事に浮き上がらせたように思う。
アルバトロス隊隊長の迫水洋平役の市原隼人さんの雰囲気は、ちょっとほかの役者さんには出せないほど、かっこよかった。なんか自然と備わってる感がある、不思議な役者さんだと改めて思った。
