DcatcHerK

アキラとあきらのDcatcHerKのネタバレレビュー・内容・結末

アキラとあきら(2022年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

 池井戸潤さんの原作未読、WOWOWでの連続ドラマ未視聴で鑑賞。
 以前の池井戸潤さん同様、期待どおりの出来映え。
 連続ドラマ1回約50分のドラマ9回を128分にしての上映なので、原作の良さが失われるのでは?と連続ドラマを視てもいないのに危惧していたが、杞憂に終わった。
 これは、三木孝浩監督の手腕のなせる業?と思う程、テンポ、展開、キャスト、セリフの全てが自分に嵌って、一瞬たりとも目が離せなかった。本当に集中していたので、終わってみればあっという間に感じ、久々にすぐにもう一度観たいと思った。
 自分の以前の仕事柄、自分の取引先が金融機関の人とやり取りした話しを聞く機会、金融機関にお邪魔する機会が多かった。そんなことを踏まえて鑑賞したが、まさに原作者の池井戸潤さんの書いている世界は、自分が見ている社会とオーバーラップすることばかり。
 自分が感じていることを一言で言うと、バブル崩壊から今に至っても、金融機関は“迷走“している感じなのだ。自分が思う“バンカー”は、竹内涼真さん演じる山崎瑛の考える、“顧客に寄り添える”ことだと思う。山崎が幼い頃に出会った満島真之介さん演じる銀行員工藤武史の姿勢、そのものだと思う。金融機関が企業としての短期的な利益を求めるあまり行員を“バンカー”に育てることができなくなっているのでは?と、勤務している行員に同情的になったこともあった。
 主演の2人、山崎瑛を演じた竹内涼真さんは、厚くて優しく、努力家の瑛にピッタリ。もう一人のあきら階堂彬に「お前、育ちがいいんだな」と言われていたけど、貧しい中で育っても、本当の意味で“育ちがいい”ところがぴったり嵌っていた。そして、階堂彬を演じた横浜流星さん。実は、出演している作品をじっくり鑑賞し、演技を観たりするのは初めて。階堂彬のクールさと家族思いな優しさがピッタリ。幼い頃に二人が出会うシーン、ラストに二人が山崎瑛の育った場所(出会った地)で会話する場面で、過ごしてきた人生は違えど、根底にある二人それぞれの優しさが見えて感動した。流れてくるback numberさんの「ベルベットの詩」が沁みてきた。
 脇を固める皆さんの演技も良かった。いつもは悪い感じの役が多い奥田瑛二さんはバンカーを見事に演じていたし、上司を演じた江口洋介さんはすっかり憎まれ役が似合う役者さんになった。江口さんの演技が無ければ、二人の主人公は中途半端に映ってしまうので、本当に重要な役だったと思う。満島真之介さんも良かったし、上白石萌歌さん、髙橋海人さん、児嶋一哉さん、ユースケ・サンタマリアさんも良かった。「山崎プレス工場」の従業員保原茂久さんを演じた塚地武雅さんも存在感があった。「乗り越えられない宿命はない」は珠玉の言葉。一瞬しか出てこなかった山内圭哉さんも、「空母いぶき」で護衛艦「いそかぜ」艦長浮船武彦を演じているのを見て以来、気になる俳優さん。ほかのキャストも、みんな存在感があった。
 最近の邦画の中では、圧倒的な作品だった。映画の中で、珠玉の言葉がたくさんあったので、もう一度観たいと本当に悩んでいる。
 最後に、金融機関の皆さんには、この映画を観て感じること多いと思うが、「取引先と共に成長する」ことが大事で、そのためには労力が必要だし、面倒なことも多いと思うが、日本全体の成長と発展のための羅針盤である金融機関の皆さんにはぜひ頑張っていただきたいと思っている。
DcatcHerK

DcatcHerK