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生きる LIVINGのDcatcHerKのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.2
 この映画、妻2度目の鑑賞、自分初見。
 昨日、「明日朝一の上映で2度目の鑑賞をしたい」と妻が言ったことと、自分自身、主演のビル・ナイさんの「アバウト・タイム 愛おしい時間について」と「マイ・ブックショップ」の演技が印象的だったという理由で、「思い立ったが吉日」という感じで一緒に鑑賞することにした。
 黒澤明監督の不朽の名作と言われている『生きる』(1952年)が原作。映画通の人なら、必ず見ている映画だと思うが、自分は鑑賞していない。
 なので、比較することなく、まっさらな状態で鑑賞した。
 シチュエーション自体は、ずっと映画やドラマの題材とされてきた官僚主義だったり、生きる情熱を失った人が死を前にして“生きる”意味を問う内容だったり、黒澤明監督の時代には先駆的なものだったかもしれないが、今では、かなり陳腐化しているストーリーだったと思う。
 ところが、ミスター・ウィリアムズを演じた主役のビル・ナイさんの紳士然とした演技や前半の仏頂面した職場での雰囲気、そして後半に垣間見せる微笑みとの対照が、ありきたりなストーリーにぐっと心を引き寄せられた。
 市役所でミスター・ウィリアムズの下で働いていたマーガレットを演じたエイミー・ルー・ウッドさんとの会話が絶妙だったし、エイミー・ルー・ウッドさんの演技も素晴らしかった。
 この映画のホームページのストーリー紹介の中の一節に、「彼は歯車でしかなかった日々に別れを告げ、自分の人生を見つめ直し始める」とあった。
 もうずいぶん前になるが、ライフプランニングの研修を受けた際に、講師が「見つめよう自分!見つけよう自分!」と語っていたのだが、その言葉がいつも自分の心の中にある。自分が何者で、何をしたくて、何をしようとし、どう努力しているのか。いつも、そんな気持ちで自分に向き合うことが、自分にとっての“生きる”意味ではないかと、その言葉を大切にしてきた。
 そして、この映画を鑑賞して、限りある生の中で、自分らしく、自分に与えられたことを情熱を持ってやって行くことが、生きていく証そのものなのだと改めて思えた。
 ビル・ナイさんは、「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」と「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」にも出ていて、顔が髭の様に無数のタコの足で覆われた姿で、右手の人差し指がタコの触手で左腕が蟹の鋏であり、右足が蟹の足で引きずって歩いているデイヴィ・ジョーンズ役だったんですね。その落差にびっくりです。
 
 おかげで今日は、朝から穏やかで、爽やかな気持ちで始められた。
 妻は、二度目の鑑賞でも、涙がこぼれ落ちてきたそうだ。
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