ドント

空母いぶきのドントのレビュー・感想・評価

空母いぶき(2019年製作の映画)
3.5
よかった。文句を言いたい部分も多々あるけどそれは後回し。近未来、民族主義を掲げる新興小国・東亜連邦が突如として日本の南端の初島を占拠。日本初の空母「いぶき」が護衛艦を従えて島へと向かうが、海には相手国の艦と戦闘機が…… 原作未読。
ヨソの国の映画ならいざ知らず、これは現代の邦画。やったらんかい!殲滅や!とは行かない。憲法に戦争放棄を掲げ、他国からは「あんまり派手に戦わないでよね?」と釘を刺され、現場も「後々こじれないような戦い方でね?」と言われちゃって、「自衛のための戦闘であって国同士潰し合う戦争じゃないんよ」という一線を越えないように戦う。アクションともバトルとも表現しづらい忍耐と我慢と節度を保った実に地味な、しかしそれゆえある種の誠実さがにじむ作品であった。
前述のように「カッコつけてるようでつけきれてない台詞の数々」「戦闘機パイロットの顔はずっと超アップ」「話してないで早く行けやな長い会話」「終盤15分くらいのバカでもわかるように伝えたいことを説明してくれる説明シーン」「市井描写として挟み込まれる『サラメシ』のノリの中井貴一が取りしきるコンビニのシーン全般」とかこれら、どうなん? と文句もいっぱい言いたいんだけど、リアルの重みや匂いを残した架空戦闘映画としてはそこそこに楽しめたのであった。
何を考えてるか読めないので5秒後に「よし、皆殺しにしよう!」とか言いそうな西島秀俊のいい具合の掴めなさをはじめ(これが顔のない相手国の異様さに共振する)、いい顔の役者が多く揃っていてその点も見所。特に首相を支える益岡徹の安定感、しばらく見ないうちに首がえらく太くなってて自衛隊員然としていた市原隼人がよい。あと完全にソ連軍人な高嶋政博。これは全然イケる方の邦画です。なお人はあんまり死にませんので、そういうお祭り感を求める筋には物足りないでありましょう。
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