鮮やかなブルーのハンチング帽にストライプ柄のスーツとベスト。
老人ホームから一時帰宅したアブラハムは、娘たちに内緒の旅に出る。
宿泊したホテルで盗難に遭い文無しになったり、ケンカ別れした娘と再会したり。
ブエノスアイレスからスペイン、フランス、そしてドイツへ。
アブラハムの中であの悲しい記憶が蘇りはじめる・・・
ポーランドに行きたい、だけどどうしてもドイツは通りたくない。
そんな彼に声を掛けたのは、ドイツ人女性のイングリッドだった。
ユダヤ史を学び、スペイン語も話す彼女はアブラハムの力になりたいと言うが・・・
美しく独創的な物語を編む妹を囲み、華やかで幸せだった一家。
アコーディオンやバイオリンも罪と見なされた時代に、収容所から逃れた彼を救ってくれた友人。
ドイツからポーランドへ向かう列車の中で、現在と過去が幾重にも折り重なっていく。
レンガ色のスーツにアイスブルーのスカーフ。
降車口からホームのベンチまで延びる、服でできた’橋’。
病室の壁に飾られているゴッホの「糸杉」。
色のない過去と色を纏ういま。
バイオリンの音色はエンドロールの後も続いていくようでした。