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博士と狂人のスクリーンのレビュー・感想・評価

博士と狂人(2018年製作の映画)
4.0
あらすじ
 
イエール大学医学部を卒業し、将来を嘱望されたいた
ウィリアム・テスター・マイナー。
しかし、軍医として南北戦争の戦場へ、そして過酷な経験から
精神を病み、常に何者かに追われている幻覚に悩み、
全く関係の無い仕事帰りの男性を家族の目の前で射殺してしまう。
精神疾患の為の行為だとして精神病院に収監される。

その頃オックスフォード大学では、オックスフォード英語辞典の編纂者を
決める会議が行われていた。
編纂者を希望するジェームズ・マレーは、
貧しい家庭に生まれながらも独学で数か国の言語を習得し学者となった
人でした。
博士号を持っていなかったことが問題視されたけれど、
編纂者に選ばれました。
マレーは、ボランティアにお願いして単語を集める方法で辞典を作成しようと考え、書店などに「ボランティア協力のお願い」が書かれたチラシを配布していく。
そして、この事が2人を結びつけることになっていく。

感想

先ずは、この話が実話が元になっていることに驚きました。

2人を結びつけたものは何だったのか?
言葉への限りない欲求だったのかも?と思います。
後世により多くの言葉を残したい、より理解して欲しいと言う思いだったのではないでしょうか?
精神を病み殺人まで犯してしまったマイナーですが、
元々は名門大学を卒業したエリート医師、教養と知性は十分だったと思います。
きっと辞典に関わっていた時は、忌まわしいことからも少しは解放されていたのでは無いでしょうか?
マナーも殺人犯と分かってもマイナーをリスペクトしていたと思います。

そして、マイナーが射殺した男性の奥さんとの関係にも驚きました。
初めは、絶対に許せないと頑なに、マイナーの軍人年金の援助を
断っていたイライザですが、少しずつ心を開き理解するようになっていきます。
映画では、2人が恋愛感情を持ったように描かれたいますが、
少し違和感を感じました。
実際には、そんな事実は無かったようです。
でも、マイナーに本をよく持って行ったようで、
2人は心を通わせていたようです。
このことも驚きですね。夫を殺した人間を許していくと言うことは
よほどのことでは無いかと思います。
きっと、マイナーの人柄は真面目で誠実だったのではないかと思います。
だからこそ、精神を病んでしまったのでは?
やはり、戦争は人を変えてしまいますね。

「船を編む」のような辞典作りの難しさよりも、
マレーとマイナーの絆を中心に描かれていたと思います。

メル・ギブソンが学者らしく抑えた演技でマレーを演じていて
少し驚きました。髭もよく似合っていました。
ショー・ペンは、流石の演技で、精神を病んでいるけれど、
誠実なマイナーに成りきっていたと思います。

このオックスフォード英語辞典は70年後に完成したそうで、
いかに困難で壮大な事業だったかがよく分かります。
その背景にこんなエピソードがあったとは、まるで小説のようですね。
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