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クレアのカメラの708のネタバレレビュー・内容・結末

クレアのカメラ(2017年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ポール・ヴァーホーヴェン監督作「ELLE エル」でのイザベル・ユペール、パク・チャヌク監督作「お嬢さん」でのキム・ミニが、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門出品のために訪れていたカンヌで、数日で撮影したという作品。このエピソードで期待値が自ずと上がってしまった分、ガッカリ度数はかなりでした。なんじゃこりゃ。

「ELLE エル」も「お嬢さん」も熱量が相当高く、緻密で繊細な作品。僕は個人的にどちらも大好きです。だからラフに撮影されたこの作品が、ラフというより雑に見えてしまいました。ラフと雑は違うんです。妙なタイミングでカメラがいきなりズームしちゃうとか「え?!」って思っちゃいました。定点カメラの美学のミヒャエル・ハネケ監督や「ポルトガル、夏の終わり」で美しい映像を見せたアイラ・サックス監督というユペール作品の才人たちと比べると、まるで素人がスマホで撮影したのかと思えるくらい実にお粗末。いやぁ、ユペールさんの無駄遣いでしょうこれ。キム・ミニも消化不良っぽい使い方だし。そして、肝心のカンヌがカンヌに見えないのです。チネチッタ川崎と湘南でロケしましたとか言われても、納得してしまいそう。あ、チネチッタも湘南も大好きな場所です。場所の悪口じゃありません。

ところで内容の話。

オンナとしての嫉妬で女子社員をクビにする女社長と、自分のお気に入りの女子に、他の男の目を引くためじゃないのかと服装を罵倒しちゃう映画監督。女の嫉妬はキツいけど、男の嫉妬はもっとキツいってことを改めて痛感。

最後にキム・ミニ扮する女子社員がまた会社に復帰できたのはよかったけど、女社長との関係修復のプロセスを、もうちょっと丁寧に盛り込んでもよかったんじゃないでしょうか。

ユペールさん扮するクレアは人間じゃなくて、カンヌに棲む魔女とか妖精、あるいは女神なのかもと思えました。いろんな人の心の闇をポラロイドで読み取ってしまう感じ。カンヌの海岸脇の暗いトンネルがクレアの棲家。でもクレア、写真を撮るのが好きというわりには、撮影している姿はそんなに好きそうな感じに見えませんでした。

本来ならポイントは2.0なんだけど、ユペール増しで3.0です。
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