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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へのhiyokoのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ポスターの色彩に惹かれて気になっていた作品、WOWOWのA24特集にて観ることができました。
中学卒業までの残りわずかな時間、高校へと移り変わっていく多感な時期の少女の日常を描いた映画。

"クールな自分"になることに憧れて、自分らしく生きる秘訣を明るく動画で投稿し続けるケイラ。
だけど実際は無口で、学校生活に馴染む自信も持てないまま。イケてるクラスメイトと仲良くなろうと努力もするけれど、反響はなし…。
そんな上手くいかない日々の中で、小さな勇気や後悔を繰り返して、少しずつ変わっていくケイラと周囲の関係。

10年程の世代の差や、日本と海外という環境の違いもあり、SNSやプールパーティなど自分には馴染みのなかった感覚もあるけど…
お互いの未熟な部分が小さくて大きな傷を付け合ってしまったり、自分らしくありたいと強く思いながらも周りの評価に心が振り回されてしまったり…。あの頃特有の苦しさや危なっかしさを孕んだリアルな感情描写が、薄れかけた記憶の底から、懐かしく共感を呼び起こしてくれました。
子供の頃は自分のことで精一杯で、普通に過ごせてる周りの皆が凄く思えていたけど、今思えばきっと誰もがそれぞれ精一杯だったよね…
あんなに未完成で苦しかったのに、よく生きてきたよなぁ、乗り越えてきた皆すごいなぁ!って気持ちが込み上げてきた。

正直10代の頃はボロボロのドン底で、今でもまだ子供時代の孤独に囚われてるような部分があるんだけど、エイス・グレードを見て、何だかそれが、ちょっとだけ浄化された気がするなぁ。
私は色んなことから心を閉ざしてしまって、前向きに向き合えるまでそれこそ10年近くかかったから、その当時にこうしてちゃんと前に踏み出せていたらな…と、ケイラの痛さや失敗も含めて、等身大で頑張る姿がとても愛しく思えた。

大人になっても全然完成には程遠いし、また新たな不安は次々あるけど、痛みを受け止めながら一生進んでいくしかないんだろうな…と、元気な時はちょっぴり前向きなニュアンスで思ってる。
そんな気持ちを後押ししてくれるような、一歩踏み出したケイラのビデオレターがぎゅっと愛しく心に刻まれました。

ケイラと共に温かく印象に残ったのは、どんな態度を取られても娘を大事に思い続けるお父さん…
タイムカプセルを燃やしながら話す2人の場面、ケイラの気持ちにも、お父さんの言葉にも、爆発的に泣いてしまった。
ちょっとイケてなくても身近で見ていてくれる家族や、背伸びしなくても気の合う友達。どんな相手でもいいから、ありのままでいられる関係性が最後に人を支えてくれるのかな…。

子供の頃は一つの大きな価値観が絶対的なものに思えてしまうかもしれないけど、クールって、本当は色んな種類があるよ!
なんとなくそれに気付けたような、きっと良い道を歩めそうだなと思えてくるケイトの表情に心が晴れたラスト。
何があっても自分なりに進んで、それぞれに合った生き方を見つけていければいいな。
私にとっては、とってもクールな映画でした。
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