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マーメイド・イン・パリのhiyokoのネタバレレビュー・内容・結末

マーメイド・イン・パリ(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

パリの街で1匹の猫と共に暮らしていたガスパール。ある日、怪我をした人魚を助けて連れ帰ったことから始まる、キュートで不思議な同居生活。恋に破れてもう二度と動かないと思っていた彼の心に、少しずつ変化が起きていく…?

美しいポスタービジュアルに一目惚れし、今年前半、最も劇場で観たいと感じた作品でしたが…
薄々予想していた通り、我が田舎では上映されず😵BDをすぐさま予約して、発売を心待ちにしていました!

冒頭から、子供心が溢れ出してくるような想像力豊かなOPに目を奪われる。
まるでおもちゃ箱の中で暮らしているようなガスパールの部屋の内装、カラフルでワクワクするような色彩!✨
映画全体を通して印象的な"青"の美しさも…。
期待以上に惹かれる映画の空気感に、物語への期待もどんどん高まっていきました。

ガスパールが偶然助けて連れ帰った人魚、ルラ。
魔法のような歌声を聞いた男性は、一瞬で彼女の虜になり、心臓発作を起こして命を落としてしまう…。
恐ろしい怪物として描かれる人魚としての側面を持ったルラですが、どこか人間離れした美しさと、唯一歌が効かないガスパールへの戸惑いに可愛さもあって、最初から心を掴まれました。
暗闇で光って見える尻尾の鱗も素敵!✨

どこか童心を持ったまま歳を重ねているような、ガスパールの純朴な人柄にも、なんだか自分の憧れを重ねて見てしまった。
ローラースケートで駆け回ったり、猫と仲良しだったり、思い出を大事にしている部分も…
そんな風でありたいな、と思いつつ、自分では「それでいいのかな?」とも感じてしまうような。そんな生き方が鮮やかに描かれていて、どことなく嬉しい気持ちになりました。

時折ロマンチックに、そして時折危うさを感じさせるような、2人の恋路。
地上の色んな楽しさをルラに知ってもらおうとするガスパールの、優しさが詰まったアイデアが素敵だった。そして、喜ぶルラの無邪気な笑顔!💕
一緒に歌うシーンが可愛くてうっとり…☺️
だけど、共に過ごすうちに全部が燃えてしまうのは、恋することで失っていく何かのメタファーなのかなぁ。
引き裂かれたもう一方のカップルの存在が、複雑なロマンスの行方に影を落としていて、ルラが人間を襲っていた理由を知ってものすごく切ない気持ちに。
相手への想いが強まるにつれて、逆にお互いを危険に追いやってしまうような…そういう苦しさや矛盾を孕んだ感情こそ愛なのかな、とも思ってみたり…。

正直なところ、後半になるとどんどん自らの理解が表面上になっていくのを感じて、我が恋愛経験の少なさがもどかしくなりました…。
トゥクトゥクに引かれるバスタブに揺られながら「激痛よ」と答えるルラの台詞に、"あっ…!"と思ったけれど、私にはその愛の痛みが真には分からなかった。
すぐ目の前に価値のあるものが見えているのに、受け取りきれないような感覚。
いつか2人の想いに涙できるような恋ができればいいのになぁ、と少しの憧れを抱きながら、その日が来るまでは心に大事にしまっておきたくなるような…。
そんな素敵な余韻が残った映画でした。

耳に残る心地いい水音と歌声を思い出しながら、期待を込めて★4.5を。
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