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氷上の王、ジョン・カリーのzogliのレビュー・感想・評価

氷上の王、ジョン・カリー(2018年製作の映画)
2.3
BBCっぽいお堅めのスポーツと芸術とゲイ文化とホモフォビアのドキュメンタリーと考えると納得出来るかもだけど、フィギュアスケートを音楽やダンスと融合させ氷上のバレエと呼ばれるまでの総合芸術的スポーツに昇華させた革新的な人物の伝記を観に行くつもりでいると結構ガッカリなのでは

ヌレエフ映画と違って本人のインタヴュー映像が沢山残っていたようで 彼の肉声と(家庭用手持ちカメラのブレ画像で見てるこっちが酔いそうな画面でなく)落ち着いたスタジオ録画の画面で物事が進行していくけれど、テレビでお行儀のいい感じで喋ってるので本人の本心はわからず

肝心の演技のシーンも観客やその頃のジョンやコーチのモノクロ静止画なんかがちょいちょい挿入されたり、同じ楽曲で他人が踊ってるバレエ映像が流れたりして氷上の彼のパフォーマンスがブツ切りにされてズタズタ
今観たいのそれじゃ無いんだよー通しで演技全部観せろとは言わないけど1-2フレーズくらいはまともに流しで観せてくれても良いんじゃ無いのか?と何度も思った 「音楽を表現する」事を追求していたジョン自身がこの編集を観たら失望するのでは?

前半のブツ切り編集とはうってかわって終盤は記録映像ダダ流しで同じフレーズのところ繰り返し使うのでメリハリも無くて編集者が変わったかやる気がなくなったのかと心配になるレベルだし

演技のシーンは映像の編集以外にも音楽面がよろしくなかった
過去のパフォーマンスが良い状態の記録として存在していないから映像が今ひとつ鮮明でないのは仕方がないとしても、どうして音源までその古い記録媒体からとったりしてるのか クラシックの有名曲なんだもん音声差し替えれば良いのに、せっかく映画館の恵まれた音響で聴いているのにもかかわらず音が薄っぺらかったり割れたりこもったりで楽曲のクオリティまで下げてくるのが残念過ぎた

おそらく制作側はフィギュアスケートに思い入れが無いんだろうなという感じ

あとは過去の友人やパートナー、仕事名前にコメント語らせて進んでいくところは顔出しが有ったり無かったりなので結局誰が喋ってるのか、その人が当時どれだけジョンに近しかった人達なのかサッパリわからないので落ち着かなかった
ジョンの音声にかぶせて平気でジョンでは無い誰だかわからない人物の映像や写真が出てきたりするので「あんた誰?この話のどこに関係してるの?」ってなる
カラオケ映像じゃ無いんだからさ……?

SMでアザ作ってたとかカンパニーの男性パフォーマー皆AIDSで亡くなったとかフラットに語られてた部分はヌレエフの伝記映画よりも正直でフェアだったし、かつてのパートナーに向けて書いた手紙を朗読させるスタイルは良かった (聞き取りやすくて抑揚もチャーミングだけど誰だったの)

ゲイフレンドリーな地域に住んで、義務も無く自由に太陽とビーチと出会いをエンジョイして、毎晩のパーティで遊び疲れて好きなだけ奔放にアレして欲望のままに生活してたのに鬱になるとかどういう事だよ〜
あのへんの描写はボヘミアンラプソディーのフレディを思い出したけど、この燃え尽きた天才は酒にも薬にも溺れなかったのかなー
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