未島夏

毒戦 BELIEVERの未島夏のレビュー・感想・評価

毒戦 BELIEVER(2017年製作の映画)
3.9
※青山シアター レビュアーオンライン試写会にて鑑賞



王道的プロットである「犯罪組織への潜入」を、狂人達との対峙によって深化する凄味。

それは作品が持つ「エンターテインメント」性への強い意識でありながら、組織の核となる『イ先生』追跡への主人公の執念を狂気に見せるフックとしても機能している。



『なぜ』、つまり動機が明確に見えない主人公の執念が理屈を踏み越え辿り着く『イ先生』との対峙にある、優しさにすら溢れたノワール的決着。

散りばめられた組織の人間への一抹の温情や愛嬌の描写が、明らかになる『イ先生』の背景へと収束していく。



普段決して見る事の出来ない社会の暗部を娯楽的狂気の濃い味付けで見せられるからこそ、ラストにある優しさが極寒の地の冷気の如く身体の芯を冷やす。

あれだけ笑いながら見ていた中盤には想定もしなかったラストの温度差に、「エンターテインメント」という解釈の振り幅の広さを実感する強度の高い映画。
未島夏

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