ドント

イップ・マン外伝 マスターZのドントのレビュー・感想・評価

3.8
 2018年。ワー面白かった~。ブルース・リーの師匠を描く「イップマン」シリーズの『~継承』における彼のライバル、チョン・ティンチを主役に据えたスピンオフ。イップマンに破れ武館を閉鎖、詠春拳を完全封印し息子と共に雑貨店を営んでいたチョンは暗黒街の輩どもと関わってしまい……
 詠春拳を使うとメチャ強いイップマンシリーズの軛から離れ(そういえば『継承』でもいかにまっとうに戦わせないかに腐心していた)、「オリジナルキャラが、同門対決で破れたので拳法を封印している」という設定を導入することで詠春拳以外のアクロバティック/乱戦/剣術アクションを充実させることが可能となった。
 そしてこのアクションがどれもこれも素晴らしいのだから美味しい美味しい。立体的にすぎる看板バトル、2対30くらいなのに全く混乱しないよう見事に作られた乱闘、そして言うまでもなく最後の最後に封印を解いてからの盛り上がり。感服、満腹するしかない。個人的には大袈裟なのに馬鹿馬鹿しさ一歩手前で「お、おおッ……すごい戦いだッ!」と思わせるグラスバトルが好き。
 アメリカ映画が西部劇に回帰するかのように本作も「殺された! ゆるさん!!」なド王道のカンフー映画物語になっている。因縁の段階を2つくらいスッ飛ばしてトニー・ジャーがいきなり襲ってくるなど大味な部分もあれどそれもまたカンフー映画と言えるだろう。物としての「鎖」に意味を持たせる中盤のある場面がなかなかに重い。
 ゴツいけどいい人感が隠せないバウティスタのキャスティングと「並みの攻撃では倒せないし一撃もらったらヤバいし投げ技もある」な強さのキャラ付けが上手いこといっている。そして暗黒街の顔役、ミシェル・ヨー御大の貫禄と動きたるや。ひとりの男が復讐心を経て己を取り戻すまでのストーリーがノワール、人情、矜持などの具材と共に料理されている至高の活劇。ところでアレはDCコミックスにコラッ!と言われたりしないのだろうか。
ドント

ドント