しゅん

幸福なラザロのしゅんのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
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最近カット数数えるのがクセになってきたのですが、本作は目算で832カット(途中で一回数字見失ったから全くあてにはならない)。おそらく、多くも少なくもない。撮り方もアップもロングもそこそこ、目立つギミックもない。映像編集の"普通"であることに少したじろぐ。その普通さが、ラザロ演じるアドリアーノ・タルディオーロの物語上の位置に反映している。前編と後編に起きた大きな変化に対して、タバコ畑の人々のラザロへの対応はほとんど変わらない。老人たちは敬遠し続け、タンクレディは変わらずなんらかの安らぎを見出し、熱い視線を注いでいたアントニアは擁護し続ける。キリスト教モチーフである「セカンドカミング」が、結局世界を変えられない。その空気感。神が再臨しても世界はどうにもならないというある種の諦念が、劇中を支えている。それが良いのか悪いのかよくわからないんだけど、心情に自然と入ってくる映画ではあった。脱穀機の粉が降り注ぐシーンが好きです。
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