エソラゴト

ブラック・クランズマンのエソラゴトのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
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スパイク・リー監督には約30年前に『ドゥ・ザ・ライト・シング 』でアメリカでの人種差別問題の現状とその根底を、黒人運動家はキング牧師の事しか知らなかった自分にもう1人重要な人物の存在を『マルコムX』で教えてもらいました。

その『マルコムX』で主演したデンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デヴィッド・ワシントンが四半世紀の時を経てスパイク・リー監督の下で同じく人種差別問題を扱った作品の主人公を演じるのは何か運命的なもの因縁めいたものを誰もが感じた事は間違いないでしょう。(『マルコムX』にも端役として出演していたと聞いて更にビックリ)

しかも題材は黒人警察官による悪名高きKKKの潜入捜査物(しかも実話!)この奇想天外なストーリーをスパイク・リー監督が如何に料理するか…面白くない筈がありません。

KKKに関しては遥か昔に観た『ミシシッピー・バーニング』での実話を基にしたノンフィクション作品とはいえその極悪非道ぶりには怒りと恐怖を覚えましたが、今作ではその活動内容や構成員の内部実態が実話だけに事細かに描かれていましたし、初期KKKの発足動機でもあるとされるユダヤ人への偏見と差別の方が実は根が深いのではないかと思わせる闇の部分も垣間見る事が出来ました。

主人公のロンが黒人差別の現状を自らの手で内側から変えていこうとする勇気ある行動と姿勢には畏敬の念が溢れましたが、恋仲になるブラックパンサー党の女性幹部パトリスには結局最後までその真意が伝わらないのがなんとも切なく感じましたし、それが紛れも無い現実なのだという事も思い知らされました。

そして最後にもう一つの近々で起こった現実を突き付けられるシーン。事件当時、自分もこの動画は何度もテレビやネットで目にしました。まさかこの劇場の大画面で再び目の当たりにすることになるとは思ってもいませんでしたし、事実だけあって衝撃度の強さは映画の比ではありません。

1970年代を舞台にしたストーリーだけれども現状は今も変わりはない、むしろ悪化している…監督の発するメッセージの意味は本編の至る所でもそして象徴的な逆さ国旗でも痛過ぎる程汲み取る事は出来ましたが、折角の映画の内容も一瞬で吹き飛んでしまう程の現実のインパクトの強さには少々蛇足であると個人的には感じた次第です。(アメリカから遠く離れた島国に住んでいる当事者意識の無い人間にそれについて語る資格は無いと言われればそれまでですが…)