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ブラック・クランズマンのさんぴんのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.0
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#映画備忘録 #20200517
#ブラッククランズマン
監督脚本/スパイク・リー
原作/ロン・ストールワース
#BlacKkKlansman
2019/アメリカ/128分
#Amazonプライム
#映画部 #映画好きな人と繋がりたい
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黒人警官と、ユダヤ系警官のKKKへの
潜入捜査を描くクライム映画。
主人公ロン役にデンゼル・ワシントンの
息子であるジョン・デビッド・ワシントン。
相棒役にパターソンのアダム・ドライバー。
監督はドゥザライトシング、マルコムXのスパイク・リー。
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2人の警官の潜入捜査ものという
バディ映画としての楽しさの面と、
実際の人種差別の歴史、現代にも
続くその差別への警鐘という面の
二面性でクラクラしてくる映画でした。
映画ど頭、風と共に去りぬと國民の創生の
場面を引用する所から始まる本作。
ここでKKKの思想的背景を手短く説明。
そして本編冒頭でも、警官となった
主人公ロンが資料室で受ける差別。
そこから黒人運動家のクワメ・トゥーレの
演説の場面で、黒人側の思想も説明。
白人側、黒人側の背景を描いてから
本編のお話が動き出していく。
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まずやっぱり潜入捜査ものとして
充分に面白かった映画。
醍醐味の、バレる!?バレない!?が
何度も繰り返されてドキドキする。
KKKのフェリックス役の人はもう
素晴らしかったですね。笑
KKKとの電話でのやり取りを担当する
黒人警官と、実際に潜入する白人警官を
最初っから最後まで疑う役。
KKKに所属してる時点で危ない人とは
わかるけど、それが滲み出てるあの顔。
そして同じくバリバリの白人史上主義の奥さん。
この夫婦は出る度に緊張感がすごくて
バレたんじゃないの!?って興奮しました。
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潜入捜査ものとしての、いわば娯楽映画の
楽しさもありながら、所々にズンとくる
場面もあって、ただの娯楽映画では
ないってことを思い出させてくれる。
印象的だったのは、KKKの射撃練習の場面。
射撃練習が終わった後に、主人公の
黒人警官が見に行くと、射撃の的は
黒人の人形だったという場面。
まず黒人人形が的っていう所に
観ている時はドン引きしつつ、
観た後に色々調べてると、あの的は
映画の小道具として作ったものでは
なくて、今でも普通にネットで買える
商品らしいです。もちろん、主人公ロン役の
ジョン・デビッド・ワシントンは
その事実を監督から聞かされていたから
あの場面での、人形を触れる怒りの
顔ってのは演技なんかじゃなくてモノホン。
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そして物語後半にも出てくるもう1つのモノホン。
1916年のジェシー・ワトソンリンチ事件。
これも観終わってから調べてみると
映画内で語られていたことは全部事実。
レイプ容疑をかけられた黒人が、死刑判決を
受けたのにも関わらず、裁判所から
出たところを群衆に拉致されリンチされ
殺された事件。そして殺された後に、
遺体の歯はその地域のお土産として
販売され、遺体の写真は絵葉書として
売られたという事件。
事実ベースとはいえ、映画というフィクションの
中でも、現実の差別を突きつけられる
ことで、なんともいえない気持ちに。
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そんな重たい部分がありつつも
映画後半は潜入捜査ものとして楽しい。
爆発を阻止する所はハラハラドキドキするし。
ラストの、言葉の訛りを武器にした
KKKへのカウンターは気持ちよかった!
白人英語と黒人英語を話せる主人公ならでは。
散々電話口で、黒人差別を口にする
KKK。黒人はまともな英語を話さないと
言われた中盤からの、お前が話してた奴は
黒人なんだよ!というカウンター。
このネタあかしはもう快感でした。
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ただ、それで終わらないのが本作。
全てが終わった後に正面から主人公ロンと彼女を映し
周りの背景が後ろに行くような演出、まるで
映画の世界から出てくるような錯覚に
陥った後、十字架を焼くKKKか映し出され、
そこから2017年のデモ集会に車が
突っ込み、死亡者が出た事件が映し出される。
そして逆さまの星条旗で終わる本作。
逆さまの星条旗は、2007年の映画
告発のときでも印象的でしたが
極度の危機が迫っているという救難信号の意味。
ここでこの映画の持つメッセージ性というか、
観る人への最後のズンがくる。
風と共に去りぬ、國民の創生という
映画から始まり、作内でも黒人映画の
引用があったり、映画の持つ影響力に
言及するセリフがあったりする本作。
そして最後に映る現実の事件と、
逆さまの星条旗で、今観てきた映画の中で
描かれ差別は今なお残るし、なんなら
それが原因で人が死に続けてるし、
優雅に映画内のことで片付けてんじゃねえぞって。
最後の最後に込められたメッセージでまたズンとくる。笑
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犯罪映画として面白さに、実際の
現実の重たさが乗っかって、見応えが
すごい映画でした。オススメです。
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